ボルツマン分布-01

 

ボルツマン分布,よく聞く言葉ですが,これは,
 気体分子などの分子が取り得るエネルギー分布
を表し,その状態は,

と指数関数となります.つまり,
 エネルギーが高い状態の分子は少ない
こととなります.
たとえば,
 大気中の分子の濃度分布は地面に低いほど高い(位置エネルギーが小さいので)
 大気中の分子の運動において,平均速度は指数関数分布となる

などがあります.

では,どのように導出するのでしょうか?ひとつひとつ考えていきましょう.

まずはある系を考えます.
ある系を考える,と言うことは,それ以外の系は考えない,と言うことです.
つまり,ある系以外とのエネルギーのやりとりはない=エネルギーはある系の中で保存している,と言うことです.

これは,
 ある小さい系,A,が存在する
 その周囲に熱浴,A',が存在する

と言う系で,熱浴A'はとても大きいものと考えてください.つまり,
 A << A'
と言うことになります.

ここでの問いは,
 系Aがあるエネルギー状態,Er,を持つ確率,Pr,はどの程度か?
を考えていきましょう.

まずは系のエネルギーを考えていきましょう.
閉鎖された系なので,エネルギー保存則が成り立ちます.
 E0=Er+E'
ここで,
 E0:系全体のエネルギー
 Er:系Aのエネルギー
 E':熱浴A'のエネルギー
となります.

熱浴A'のエネルギー,E',はいろいろな状態をとることができます.その数を,
 W(E') = W(E0-Er)
としましょう.その取り得る確率,Pr,は,この状態の数に比例します.

となります.当然のことながら,

です.ここで,E0 >> Er,であるので,状態の数,W,をテイラー展開します.
テイラー展開とは,

です.さて,次がミソなのですが,
 テイラー展開するのは,状態の数,W,ではなく,状態の数,W,の対数
となるところです.第三項以降は無視して,

となります.ここで,

とおけば,

とある熱浴のエネルギー状態,E',を取り得る確率,を求めることができます.
規格化するために,

であるので,

となることがわかります.

さて,
熱浴A'のエネルギー,E',を取り得る確率,Pr,は,そのまま系Aが Er(=E0-E'),をとる確率ですので,この,Pr,が系Aがあるエネルギー状態,Er,を持つ確率,となるわけです.

と言うことで,その分布は指数関数分布となり,Er,が高くなるほど確率は低くなるわけです.

では....このβとはどう考えたらよいのでしょう?

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