FLIMにおける 蛍光強度の減少

FLIM,という蛍光寿命の測定方法があります.
FLIMとは,蛍光寿命測定法(Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy) .

これは,私は使ったことがありませんが,私の理解では,
 パルスレーザーにより,一過的に蛍光を励起させる
 その後の蛍光の退色の時間経過を見る

というもので, そのため,グラフの横軸は数十ナノ秒オーダーという非常に短い時間での計測となります.

さて,その減衰の状況は,指数関数で表すことができ,一般的には,
 一つの指数関数
で表すことが多いようですが,
 二つの指数関数の和
で表すことができる現象もあるようです.

具体的には,
 PubMedID 22426226 Journal Nat Commun, 2012;705,
 Title Intracellular temperature mapping with a fluorescent polymeric thermometer and fluorescence lifetime imaging microscopy.
 Author Okabe K, Inada N, ..., Funatsu T, Uchiyama S
の結果のように.
通常は,片対数(蛍光強度を対数表示)で表すので,二つの直線でフィットできるようです.

さて,この状況は,どのように考えればいいのでしょう?
論文には,
 fast and slow fluorescence decays of FPT originated from the hydrogen-bonded and the hydrogen bond-free DBD-AA units,
とあり,つまり,
 二つの逐次反応で,早い反応と遅い反応とに分けることができる
というものでした.

逐次反応というと,ここ,で説明したように,

なる反応です.ここで,
 A:初期状態(蛍光を発する)
 B:中間状態(蛍光を発する)
 C:退色状態(蛍光を発しない)
とすると,観察できる蛍光は,AとBの状態の和となります.
もちろん,A状態とB状態では蛍光強度は違うと考えていい(同じでもいい)ので,それを加味すると,

から,

となります.整理すると,

この,第1,2項の係数が”+”となる条件があればいいわけです.

第2項を見ると,マイナスがついていますので,
 k1 >k2

である必要があります.
さらに,第一項の係数も”+”となる必要がありますが,これを吟味してもなかなか条件がはっきりしません.
そこで,このように考えてみましょう.
 蛍光は下がる方向にある
という事実です.つまり,
 微分値は常にマイナス
です.

そこで,t=0,での微分値を計算してみましょう.

となります.

つまり,

 k1 >k2 : 早い反応のあとに遅い反応がくる

 β > α : 最初の状態の蛍光の方が強い

というに条件を満たせば,

 二つの指数関数の和

で蛍光強度が減少することとなります.

エクセルで計算すると,このようになります.

t