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Vol.1
大学院生山口夏実さんと行く甲斐研究室ツアー ショウジョウバエとその生殖細胞を見てみよう! 2021.3.1

今日は、生命機能研究科の大学院生の山口夏実さんとともに甲斐研究室(生殖生物学研究室)を訪ねました。甲斐研究室では、ショウジョウバエをつかい、生殖細胞を生み出す幹細胞の維持機構や、幹細胞から分化した生殖細胞がそれぞれ卵子と精子に成熟していく機構などについて研究されています。

山口さんは、ふだんは深川研究室(染色体生物学研究室)で、染色体の複製や分配に関わるタンパク質の構造解析をされています。山口さんは、これまでに何度か甲斐先生にご自身の研究について話をされたことがあるそうですが、生殖生物学の実験を体験するのは、これが初めてとのこと。

異なる分野の実験は、聞いて知っていても、体験しないとみえてこないものがあります。山口さんがどのように感じられたのか、ツアー中の様子をすこしご紹介します。

甲斐:いらっしゃい。甲斐です。
今日は我々の研究材料のショウジョウバエの生殖細胞を見てもらいます!が、その前に、山口さんは何を研究してんのん?

山口:私のラボはご存知かと思いますが、染色体の分配メカニズムについての研究です。私のテーマはその中でも、染色体分配時の鍵になる装置、動原体について調べています。どうやって、どんなふうにそれができているかを生化学的に実験したり。動原体はかなり大きな蛋白質複合体なので、解析は思ったより複雑です。試験管内で、蛋白質同士の相互作用を再現したり、構造を原子レベルでも解析したりとか、いろんなアプローチから研究に取り組んでいます!

甲斐:なるほど!タンパク質の構造って、パズルを解いていく楽しさがあるよねー。でも日常的に「いきもの」を扱うわけじゃないから、私はちょっとさみしいねん。うちの研究室の魅力は、なんといっても「生物」をみているってことかな。「分子」とか「細胞」というより「個体」をみているってのが、やっぱおもろい。

山口:たしかに、タンパク質ばかりみていると、生き物らしさがみえにくかったりします。今日は解剖も体験させていただけるとのことで、たのしみにして来ました。

甲斐:生殖細胞の特徴は、なんといっても「永遠に生きる」ってことやねん。個体は死ぬけれど、生殖細胞は生きつづける。種の保存からすれば、われわれはただの乗り物で、ドライバーは生殖細胞やねん。そんな生殖細胞がどんなふうに作られているかを知りたくて研究してます。

山口:はじめから生殖細胞の研究をされていたのですか?それに、どうしてショウジョウバエを選んだのですか?また、他の分野を研究しようと思ったことはなかったですか?

甲斐:大学院生のときは、T4ファージと大腸菌をつかってRNAの安定性を研究しててん。アメリカでショウジョウバエと生殖細胞研究をはじめました。小学生のときは「植物学者」になりたいって卒業文集に書いた気がするけど、大学で考えなおしました。細胞壁ってカタいやん?あれがちょっと。。。あと、遺伝学がしたかった。塩基配列っていうデジタル情報が命になるってすごくないですか?

ちなみに、実験室には食虫植物のウツボカズラがありました。飼育中のバイアルから脱走したショウジョウバエがトラップされているそうです。

甲斐:それで、なぜショウジョウバエをつかうかというと、モーガン以来、一世紀以上の遺伝学の歴史があり、ゲノムが2000年にほぼ解読されているモデル生物。小さく、飼いやすく、安いというのもあるけど、十日間で一世代まわるので、生殖生物学の研究にうってつけです。

トークであたたまったところで、いよいよ、実験室へ。須山先生にご案内いただき、ショウジョウバエの解剖をします。ちなみに、須山先生はドイツでポスドクをされていたときにシンガポールにいた甲斐先生と出会われたそうです。めぐりめぐってまた一緒に研究できるのも、研究者ならではなのかもしれません。

須山:須山です。今日は実体顕微鏡で見ながらショウジョウバエを解剖してもらいます。卵巣を取り出し蛍光顕微鏡で生殖細胞の核や核のまわりのヌアージュという構造をみてみましょう。

二酸化炭素でハエを眠らせるところから、メスとオスを見分けて卵巣を取り出すところまで、須山先生の迅速、丁寧な案内で、あっという間に生殖細胞観察の準備完了。これまで実体顕微鏡をつかう機会がほとんどなく「解剖は実は苦手」という山口さんでしたが、サクサクと手を進められ、目が輝いていました。

山口:卵巣は、実体顕微鏡でこんな感じでした。ハエの体のなかでめっちゃおおきく、グレープフルーツのつぶつぶのような細胞がみえました。卵巣のなかにはきまって15個の栄養細胞と1個の卵母細胞があるというのも驚きでした。

須山:さきほど取り出した卵巣は、核のDNAやヌアージュのタンパク質が蛍光色素で染められています。蛍光顕微鏡でみると、卵細胞が多核である状態や、核膜のまわりに蛍光タンパク質が局在している様子がわかります。

山口:青色のところがDNAで核のあたりをあらわし、赤色と緑色のつぶつぶがヌアージュのタンパク質が集まっている場所ですね。撮影した像を重ねてみると、核の外側にヌアージュのタンパク質が分布しているのがよくわかりますね。

須山:赤色と緑色の両方が局在している黄色のつぶつぶのところに、小分子RNAをつくる装置があるんですよ。わたしたちは、生殖巣に特異的に発現している小分子RNAなどに注目してゲノムを安定にする機構を解明しようとしています。

実験を終えたところで、ふたたび甲斐先生とともに山口さんに今日の感想をききしました。ショウジョウバエの飼育の環境に驚いたという話や、想像していた以上に卵巣がおおきくて解剖しやすかったという話など、学部生のときからずっとタンパク質の構造解析に取り組んできた山口さんにとって生物学らしい!?実験におおいに刺激を受けられたようです。

山口:研究室遍歴や、どのようにして研究室主宰者になられたのかなどについてもまた、いろいろなエピソードをききたいです。

甲斐先生と須山先生をはじめとし、甲斐研究室には留学経験豊かな研究者がたくさんおられます。キレッキレの研究内容の話はもちろん、研究者のコミュニティのあれこれ、おもしろい話をきくことができるでしょう。ご興味のある方は、以下のサイトも参考に、実際に研究室を訪ねてみてください。

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