研究テーマ

細菌感染症にかかわる分子と受容体の解析・医学への応用

研究代表者プロフィール

目加田 英輔

大阪大学微生物病研究所細胞機能分野・教授

1974年山形大学理学部卒。1974年から1979年大阪大学微生物病研究所研究生。大阪大学微生物病研究所助手、大阪大学細胞工学センター助手、助教授、久留米大学分子生命科学研究所教授を経て、2000年より大阪大学微生物病研究所細胞機能分野教授。これまで、ジフテリア毒素の細胞内侵入機構、ジフテリア毒素リセプターの解析、増殖因子としてのジフテリア毒素リセプターに関する研究を行ってきた。

研究代表者
  • 目加田 英輔 (大阪大学微生物病研究所細胞機能分野・教授)
研究分担者
  • 岩本 亮 (同・准教授)
  • 水島 寛人 (同・助教)

研究概要

細菌感染症で重要な役割を果たす細菌毒素の多くは、宿主細胞の膜タンパク質(毒素受容体)に結合して細胞内に入り、毒性を発揮する。ジフテリア毒素の場合、その毒性発現にクリティカルな役割を果たしているのがジフテリア毒素リセプター(proHB-EGF)である。この分子は、そのEGFドメインでジフテリア毒素を結合し、エンドサイトーシスによって毒素を細胞内に取り込む役割を果たす。ジフテリア毒素リセプターの持つもう一つの顔が増殖因子である。この分子は、膜型の状態で細胞膜に挿入された後、細胞表面でプロテアーゼによって切断され分泌型増殖因子(sHB-EGF)となる。sHB-EGFはEGFファミリーの膜結合型細胞増殖因子で、心臓の形成、心筋の維持、皮膚の創傷治癒など、生体内の様々な部位で増殖分化因子として働いている。sHB-EGFやproHB-EGFの生体での役割、作用機構について、細胞レベル、個体レベルでさらに詳しく解析を行っている。HB-EGFは癌細胞の腫瘍形成にも深く関与しており、HB-EGFは癌治療の有望な分子標的である。現在我々の研究室では、これまでの研究成果を基に、ジフテリア毒素変異体CRM197を有効成分とする抗癌剤の開発も進めている。

14mekata.jpg (左)
ジフテリア毒素は、Aフラグメント(赤色の部分)とBフラグメント(緑色の部分)からなる。Bフラグメントでジフテリア毒素リセプターに結合する。ジフテリア毒素リセプターは、CD9などの膜タンパク質と複合体を形成している。CD9はジフテリア毒素とジフテリア毒素リセプターの結合を高める作用がある。リセプターに結合したジフテリア毒素はエンドサイトーシスによってエンドソームに取り込まれ、次にAフラグメントがエンドソームの膜を通過して細胞質に至り、そこでペプチド伸長因子EF2を失活させて、細胞の蛋白合成を止める。

(右)
ジフテリア毒素リセプターであるproHB-EGFは細胞表面でプロテアーゼによって切断されて分泌型となる。分泌型HB-EGFは、自分自身、あるいは周辺細胞のEGF受容体に結合して、これを活性化する。活性化されたEGFリセプターはRas/ERKを活性化し、proHB-EGFの合成を促す。Ras/ERKの活性化はproHB-EGFの切断も促す。種々のGPCRリガンドやストレス誘導刺激もproHB-EGFの切断を促す。したがって、GPCRリガンドやストレス誘導刺激が恒常的に存在する条件では、分泌型HB-EGFがpositive-feedback loopによって過剰生産されて、これが組織の過形成や癌細胞の増殖に働いていると考えられる。

最近の代表的な論文

  1. Iwamoto, R., et al.  HB-EGF and ErbB signaling is essential for heart function (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100, 3221-3226.
  2. Yamazaki,  S., et al.   Mice with defects in HB-EGF ectodomain shedding show severe developmental abnormalities. (2003) J. Cell Biol. 163, 469-475.
  3. Miyamoto, S., et al.  Heparin-binding EGF-like growth factor and the LPA-induced ectodomain shedding pathway is a promising target for the therapy of ovarian cancer.  (2004) Cancer Res. 64, 5720-5727.
  4. Mine, N., Iwamoto, R. and Mekada, E. HB-EGF promotes epithelial cell migration in eyelid development.  (2005) Development 132, 4317-4326.
  5. Xie, H. et al. Maternal heparin-binding-EGF deficiency limits pregnancy success in mice. (2007) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104, 18315-18320.
  6. Kageyama, T. et al. Diphtheria toxin mutant CRM197 possesses weak EF2-ADP-ribosyl activity that potentiates its anti-tumorigenic activity. (2007) J. Biochem. 142, 95-104.
  7. Minami, S., Iwamoto, R. and Mekada, E. HB-EGF decelerates cell proliferation synergistically with TGF-α in perinatal distal lung development. (2008) Dev. Dyn. 237, 247-258.
  8. Miyado K., et al. The fusing ability of sperm is bestowed by CD9-containing vesicles released from eggs in mice. (2008) Proc Natl Acad Sci U S A. 105,12921-12926.
  9. Mizushima, H., et al. Integrin signal masks growth-promotion activity of HB-EGF in monolayer cell cultures. (2009) J. Cell Sci. 122, 4277-4286.
  10. Iwamoto, R., et al. (2010) HB-EGF function in cardiac valve development requires interaction with heparan sulfate proteoglycans. Development 137, 2205-2214.
  11. Koshikawa, N., et al. (2010) MT1-MMP cleaves off the NH2-terminal portion of HB-EGF and converts it into a heparin-independent growth factor. Cancer Res. in press.