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リーダー挨拶

日本発新パラダイム創成―オルガネラネットワーク医学

医学・生命科学は、20世紀末からの爆発的な、ゲノム、プロテオーム、グライコームなどの網羅的解析を通して、個々の分子機能の解明や分子間相互作用の理解が急速に進んできた。また、遺伝子ノックアウトマウスに代表される、個々の遺伝子に関する個体レベルでの解析も精力的に行われてきた。しかし、多くの生命科学研究者は、このままの研究を漠然と続けていくだけで、「細胞はどうやって生きているのか?」「生命とは?」という根本原理の理解にたどり着けるとは思っていない。生命の基本単位である細胞の機能をシステムとして理解し、その破綻として起こる様々な病態の本質を解明し、治療に結び付けていくためには、細胞を構成する分子機能集合体であるオルガネラに着目し、それらオルガネラどうしが繰り広げているであろうオルガネラ間のコミュニケーション、つまり、オルガネラネットワークを理解することが必須であるとわれわれは考えたわけであり、その提案が今回認められ、大阪大学の中に1つの教育研究拠点を作る機会が与えられた。

オルガネラは、「細胞」という世界の中に存在する、機能を異にする小世界である。個々のオルガネラの機能が巧に融合して、1つの細胞は生きていく。医学・生命科学という学問も「細胞」と「オルガネラ」の視点で捉えることができるのかも知れない。医学・生命科学を1つの「細胞」として捉えて見ると、細分化・専門化された個々の研究分野は「オルガネラ」と言えるのだろう。医学・生命科学に限らず、科学は、機能や役割の異なるいくつかの分野に細分化・専門化されながら、個々の分野の中で精力的な研究が進められ、全体としての科学の発展に貢献してきたと言える。今、そのオルガネラ機能を融合し、1つの細胞を作り上げることが、21世紀の科学の進展のために求められている。

本拠点では、様々なオルガネラを真正面に見据えて研究する細胞生物学、オルガネラネットワークの構築に必須の役割を果たす糖代謝機構を研究する糖鎖生物学、オルガネラネットワークを極めて巧に利用して子孫を増やそうとする病原体と宿主細胞のインターフェースを研究する感染症学を融合することにより、オルガネラネットワーク医学と呼ぶべき、新しい医学・生命科学の分野を開拓したい。さらには、その成果を基盤として、感染症、神経筋疾患、免疫疾患、癌、生活習慣病や老化など、従来の分子レベルの解析のみでは解明できない、多くの因子や環境が複雑に絡み合う病態の解明と治療に新たな視点の導入と展開を可能にする、世界で唯一の教育研究拠点を樹立していきたいと考えている。幸いにも、大阪大学にはこの分野融合を推進し、医学へと応用していくことを可能にする人材が揃っている。その力を結集し、また、次世代の人材を自ら育てることを通して、新しいパラダイムを創成したい。

拠点リーダー 米田 悦啓