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木下教授らが"GPIアンカー生合成にペルオキシソームが働いている事"と"GPIアンカー型タンパク質の小胞体からの輸送にGPIアンカーの糖鎖構造の変化が重要である事"を発見

2009.10.20

 木下タロウ 教授、神澤範行 特任研究員らのグループは、ペルオキシソームがタンパク質の修飾構造の一つであるグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーの生合成に働いていることを突き止めました。本研究成果は、2009年10月7日にPNASのオンライン速報版に掲載されたとともに、10月14日付の日経産業新聞で報道されました。  
 また木下 教授、本GCOEの藤田盛久 特任助教らのグループは、GPIアンカー型タンパク質の小胞体からゴルジ体への効率的な輸送にGPIアンカー糖鎖の構造変化が必要である事を発見しました。本研究成果は、2009年10月16日発行のCellに掲載されるとともに、10月16日付の日経産業新聞、日刊工業新聞で報道されました。

PNAS論文概要
 GPIアンカーは小胞体で、ホスファチジルイノシトール(PI)に糖鎖が結合して生合成される糖脂質の一種で、多くのタンパク質の修飾に用いられる。これまでの研究で、生合成の初期の段階ではジアシル型のGPIアンカーが、第3ステップ後に大部分が1-アルキル-2-アシル型に構造変化することが明らかになっていたが、そのメカニズムは不明であった。GPIアンカー部分がアルキルアシル型の脂質であることが、GPIアンカー型タンパク質の機能に重要である可能性が考えられ、GPIアンカーのアルキル構造の由来を解明することは、GPIアンカーの生理学的意義を解明する上でも重要であった。 本研究では、ペルオキシソームのアルキルリン脂質生合成経路の遺伝子を欠損した細胞株を用いてGPIアンカーの解析を行った。その結果、これらの細胞ではGPIアンカーのアルキルアシル型への構造変化が起こっていないことが分かり、小胞体でのGPIアンカーの生合成には、ペルオキシソームの働きも必要であることが明らかになった。ペルオキシソームで生合成されたアルキル構造を持つ何らかの脂質が小胞体にもたらされ、そのままあるいはさらに変化したものが、アルキル供与体になると考えられる。すなわち、1-アルキル-2-アシル型GPIアンカータンパク質の生合成には、小胞体、ゴルジ体に加えて、ペルオキシソームが関わっていることが明らかになった。

GPI-Eng2.jpgCell論文概要
 真核生物には糖脂質であるGPIアンカーによって細胞膜に繋ぎ止められている一群のタンパク質(GPIアンカー型タンパク質)が存在し、発生・免疫・神経形成に必須の役割を担っている。これまで、GPIアンカー型タンパク質が合成されてから、細胞表面へ運ばれる間にGPIアンカーの糖鎖部分の構造が変化することが推定されてきたが、その実体と意義については不明だった。本研究では、GPIアンカー型タンパク質の輸送が遅くなる変異細胞を単離し、原因遺伝子を同定・解析した。その結果、原因遺伝子PGAP5はGPIアンカーの糖鎖部分の構造を改変する活性を有していることが分かった。さらに、PGAP5によるGPIアンカー部分の改変はGPIアンカー型タンパク質の小胞体からの効率的な輸送に必須の役割を果たしていることが明らかとなった。今回の成果は、タンパク質に修飾された糖鎖の構造がタンパク質の輸送を調節しているという点で、新しい発見であり、小胞輸送における積み荷選別機構に新たな知見を提示するものである。 Kinoshita-English2.jpg