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吉森教授らがオートファジーを制御するタンパク質2種類を新たに発見

2009.03.09

吉森保教授、松永耕一特任研究員らのグループは、審良静男教授らのグループと共同で、細胞内の不要タンパク質などを分解するオートファジー(自食作用)を制御するタンパク質2種を新たに発見しました。Atg14L及びRubiconと命名されたこれらのタンパク質は、オートファジーに不可欠なタンパク質であるBeclinに結合します。Atg14LとBeclinの複合体はオートファジーの初期段階に必須の働きをする一方、RubiconとBeclinの複合体はオートファジーの後期段階を抑制する、すなわち両者は正反対の機能を持つことが分かりました。オートファジーは炎症反応、心不全、糖尿病、アルツハイマー病の防止や寿命延長、病原菌の排除、免疫システムの維持など多岐に亘る役割を持つことが最近明らかになってきており、RubiconとAtg14Lはそれらの働きに重要な役割を担うと考えられます。さらにRubiconとBeclinの複合体は、細胞外の栄養などを細胞に取り込んで分解するエンドサイトーシス経路という細胞の機能も抑制していました。Beclinの遺伝子を破壊したマウスでは、がんが多発することが知られています。おそらくAtg14LとRubiconのバランスによってオートファジーとエンドサイトーシス経路の働きがBeclinを通して巧妙に調節され、細胞のがん化を防いでいるのではないかと考えられます。本研究成果は、2009年3月8日(英国時間)発行の英国科学雑誌「Nature Cell Biology」電子版に掲載されるとともに、3月9日付の日本経済新聞、産経新聞、時事通信、共同通信、その他で報道されました。


NCB論文概要
細胞内大規模分解システムであるオートファジーは、細胞成分のリサイクルや飢餓時の栄養源確保に加え、炎症反応、心不全、糖尿病、アルツハイマー病の防止や寿命延長、病原菌の排除、免疫システムの維持など多岐に亘る役割を持つことが最近明らかになってきている。今回我々は網羅的結合タンパク質探索により、オートファジーに必須のタンパク質Beclin 1と結合する未報告の新規タンパク質を二つ発見し、Atg14L, Rubiconと名付けた。これらはBeclin 1と相互排除的に結合し、Atg14L-Beclin 1複合体はオートファジーの初期過程を正に制御し、一方Rubicon-Beclin 1複合体は後期過程を負に制御することが判明した。さらに、Rubicon複合体はエンドサイトーシス経路に対しても抑制的に働いていた。この発見は、オートファジーの制御機構の理解に大きく寄与するものである。また、Beclin 1の機能が低下したヘテロKOマウスではがんが多発することが知られている。オートファジーとエンドサイトーシスという2つの重要な細胞機能を、Beclin1を介してAtg14LとRubiconが巧妙に調節し、発がんを抑制しているのではないかと考えられる。

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