3. Claudinのノックアウトマウス解析

 ClaudinはTJ strand形成に必須の4回膜貫通蛋白質です。27種類のclaudinの多様性は細胞間バリアー機能の多様性にどう関与しているのでしょうか。

<ノックアウトマウスでの解析>

 1) リーキー型claudinとバリアー型claudin

 生体内には、細菌や毒物などの危険物の侵入をブロックするためのバリアー型のTJと、必要なイオンや水分を選択的に通すためのリーキー型のTJの、2つのタイプのTJがあります。こうしたTJの性質は、それを構成するcladuinの発現量や組み合わせにより決まると考えられています。
 小腸は、リーキー型TJを持つ代表的な上皮組織です。小腸では、リーキー型のclaudinであるclaudin-2やclaudin-15が発現しています。私たちは、claudin-15ノックアウトマウスの解析により、小腸でのグルコース吸収に必要なナトリウムイオンは、TJを通って、血管側から腸管内腔側へと供給されていることを、実験的にクリアーな形で証明しました。ナトリウムは、腸管上皮をグルコースとともに細胞質経由で共輸送的に吸収されると、今度はTJを通って血管側から腸管内腔に再供給されるという"エコシステム"により、生体内で循環・再利用されているようです。
 今後、"イオン環境と栄養吸収"ばかりではなく、"イオン環境と炎症・修復"、"イオン環境と細胞増殖"、など広い視点からの研究を進めていきます。

Claudinのノックアウトマウス解析
図1
細胞間Na+透過性の異常と小腸イオン環境ホメオスタシスおよび栄養吸収障害(Cldn15 KOマウス)

 2) プロトンバリアー型TJと胃上皮組織

 胃は、胃酸を出すことで、蛋白質を加水分解したり、主細胞から分泌されるペプシノーゲンを活性化することで、食事中の蛋白質を分解します。また、殺菌的な働きもします。しかし、胃内のpHは0?1にまでも下がるので、このとき、TJを挟んで100万倍ものプロトン濃度勾配が生じます。もし、この勾配に従って粘膜下へとプロトンが漏れでてしまうと、胃組織はすぐに傷害されてしまうと考えられています。しかし、こうした重要な現象も、きちんと検証はされていませんでした。
 私たちは、胃のTJの主要なclaudinである胃型claduin-18のノックアウトマウスを作製解析し、TJにより形成される胃酸のバリアーが壊れると、プロトンのリークにより、本当に胃炎が生じてしまうことを証明しました。
 慢性的な胃炎は、胃癌に直結すると考えられています。今後、本ノックアウトマウスを用いた胃炎の進行や胃癌発症の解析を進め、将来癌の治療への足掛かりになることを目指していきます。

Claudinのノックアウトマウス解析
図2
H+バリアー障害による胃炎の発生(Cldn18 KOマウス)



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