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     第14回:全ての植物をフィボナッチの呪いから救い出す



            

               ロマネスコ(左)とマンデルブロ集合の一部(右)

植物にかかったフィボナッチの魔法

このオーラ全開の野菜、なんだか知ってますか。
そう、最近デパートなんかではよく見るようになったロマネスコというカリフラワーの仲間である。
一説によると、悪魔の野菜とか、神が人間を試すために作った野菜とか言われているらしい。
なんと言っても凄いのは、フラクタル構造がめちゃめちゃはっきり見えること。
まるで
マンデルブロ集合みたいだ。


ね、似てるでしょう。フラクタルがこんなにはっきり見える構造物は、他には無いんじゃないかな。

この植物が面白いのは、それだけでは無い。
実の出っ張った部分をつなげていくと、らせん構造がくっきり見えてくるでしょう?
そのらせんの本数を数えてみよう。



右向きのらせんと左向きのらせん、を数えて行くと・・・8、13である。
この数は、神秘の数列フィボナッチの要素なのだ。


フィボナッチ数列は、大昔、ピサのボナッチさんが発見したと伝えられる、非常に有名な数列である。
定義は

F(1)=1F(2)=1, F(n-2)+F(n-1)=F(n)

つまり連続した2項の和が次の項になる、という簡単なものだ。計算していくと、

1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55・・・・

となり、8,13が出てくる。
一見、なんの変哲もない数字の並びに見えるのだが、こいつ等は、曲者なのだ。
なにせ、自然界の様々な物が、この数字に関連していると言われているのだから。

実は、フィボナッチの魔法が掛かっているのは、ロマネスコだけでは無い。
一般に花の花弁の数は3,5,8が多いとされており、不思議なことに全てフィボナッチ数である。
また、ロマネスコのようにらせんを数えられる実を持つ植物も多い。
パイナップルや松ぼっくりなどがよく見る例だが、これ等のらせんの数もほとんど5、8,13なのだ。

もっと数の多い場合もちゃんとフィボナッチ数になる。

下の写真は、コーンフラワーという花であるが、見事に34,21のフィボナッチ数のらせんである。
できれば、その辺に咲いている植物の花で、実際にためしてご覧なさい。
ほとんどの場合34,21は、必ず出てきます。


さらにもっと大きい例では、ひまわりが89、144という最大のフィボナッチ数を持つと言われている。
こうなるともう偶然ではありえず、自然はフィボナッチ数に支配されていると言いたくなってくるでしょう?



フィボナッチと黄金比

そう考える人は、古来から非常にたくさん居る。
皆さん黄金比という言葉を聞いたことがあると思う。
「モナリザやミロのビーナスの形状は黄金比に従って作られているので美しい」とか、「ピラミッドの斜辺の長さと底面の1辺の比が黄金比だ」、とかいうやつです。
一度は聞いたとこありますよね。



このφが黄金比と呼ばれる無理数である。

この数は、X2=X+1、あるいは1=1/X+1/X2 の解であるが、この関係を図で表すと、


となる。

1 , φ , φ  あるいは 1/φ , 1/φ , 1  はいずれも、公比がφの等比数列であるが、面白い事に、第3項が1,2項の和と一致するのだ。

フィボナッチ数列の一般項は、大学入試程度の数学で(実際に出題されたことが有ります)導くことができて、


となり、ここにも黄金比φが出てくる。

上の式は、n→無限大では、

Fn→φn/5

になるので、フィボナッチ数列は、公比がφ(黄金比)の等比数列に収束する。

つまりnが大きいときは

F(n-2):F(n-1):F(n)= 1/ φ:1/φ :1

となる。
フィボナッチ数列の定義は

F(n-2)+F(n-1)=F(n) 

なので、フィボナッチ数列と黄金比は、ほとんど同じものであることがわかる。            



黄金比の性質から、下図の様な作図が可能だ。

 


黄金比の長方形から、正方形を取り除くと、残った長方形も黄金比の長方形になり、これは際限なく繰り返すことができる。
古代ギリシャ時代の数学者(ユークリッドとか)は、この性質が、非常に気に入っていたらしい。
神秘の比率というわけで、いろいろな自然の造形や生物のプロポーションが、黄金比であるとの主張が無数にある。
たとえば、人の顔の縦横比はこの比率が「一番美しい」とか。「黄金比」なる名前もそこから来ている。

 
ダビンチのデッサン      パルテノン神殿



フィボナッチで一攫千金?



ギリシア人は「人工物のプロポーションも、この比であることが望ましい」、と思ったらしくパルテノン神殿の設計に使われている(眉唾です)。
最近でも、「キヤノン、神秘のパワーを秘めた“黄金比”を追求したデジカメ『IXY 1』を発表
、とかいうCMが実際に有った。
神秘の力にすがろうとする人は、今も後を絶たない。

というか、キャノンはまだましな方で、もっとあやしく、フィボナッチ株式投資法
なんてものまである。
この投資法は、結構ポピュラーなものらしく、ほとんどの投資会社のHPにこのやり方を説明するページがある。
どうも、株や外貨の変動が、フォボナッチに関係する比率に達した時に反転する、という理屈?らしい.
しかし、株と数列が本当に関係あるのだろうか?筆者には、全く理解できない。

http://www.nomura.co.jp/terms/japan/o/golden_div_ratio.html【野村証券のHPより)
http://www.fxtsys.com/tech20.html(投資会社によるフィボナッチ投資法の解説)
http://www.facebook.com/Fibonacci.Investment.Institute(フィボナッチ投資研究所)
http://www.tradersshop.com/bin/showprod?c=9784775970423(基礎から学ぶシステムトレード)



さらに怪しいものとしては「フィボナッチ馬券学講座」、 なんてものまでであった。うわあ。。。。
http://keiba-boy.com/0008.html
http://ameblo.jp/fineteqint/theme-10041115594.html
http://fineteqint.exblog.jp/18254128/
http://o323o813.blog.fc2.com/category1-1.html


植物の葉や種の並びとフォボナッチ数。

全く何の関係もなさそうなのに、その関係性は否定出来そうもない。
だが、その理由が解らないままに植物のフィボナッチの関係を認めるのであれば、株との関係だって否定することはできなくなる。
ついでに植物がフィボナッチなら馬だって、、、、、、、う〜〜ん。

こまった。このままでは、我々は、(5−3)とか(8−5)の馬券しか買えなくなってしまうぞ〜。



数学者(数学愛好家)の解説は、あんまり納得できない

だから、どうしても、植物がフィボナッチに支配される理由を理解しなければならないのである。
この問題を解説した本は結構出ており、インターネットでも解説は多数見つかる。
で、それらを読んでみたのだが、、、、、

う〜ん、こまった。全然納得できない。

「理解できない」のではなくて、納得できない。

「これで、ほんとに説明になってるの?」という感じである。

(ちなみに、投資関係のHPの解説は論外である。数列と級数の区別もできない人が書いてるようで、まるで理解不能。)

大体、著者のほとんどは数学者(あるいは愛好家)なので、「どーです。数学って凄いでしょう??」というノリで書かれているものばかりだ。
一般人(数学者以外)が読めば「理解」よりも、「数学って凄いなあ」という感想しか出てこない。
これでは、フィボナッチ投資法や馬券術を奨励しているようなもんだ。

常々思うのだが、理解には、いろいろなレベルが有る。
何かの問題の解法見て


「凄いっ」

と感じれれば、一応理解したと言える。

が、もっと上が有るのだ。

最上級は

「そんなのあったりめーじゃん。どこが凄いんだよ」

である。

理解と言うのは、「あたりまえ」と感じる事だ。だからこれが最上級。

ちょっと変な例かもしれないが

「競馬で、円周の部分のコースの長さと半径の比が、πになる!」、と言われて、

「うお〜〜神秘の数πが出てきた、すげぇ!」、と感動して3−14の馬券を買うのはアホである。

「あたりめーだよ、πの馬券?あほか!」、が正しい。
でしょ。

というわけで、今回の「明日はどっちだ」は、生物学者の目からこの問題を解決し、フィボナッチの魔法を解いて見せましょう、というお話です。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。



普通の解説

ではまず、一般的な説明から始めよう。
ほとんどの解説では、まず、黄金比の性質を解説する。
これは、このコラムの冒頭で解説したものと同じ。

次に、その性質をつかうと植物がフィボナッチ数を持っていることが有利になる事を示すのだが、それには、植物のらせん葉序を使う。
(葉序:phyllotaxis, 植物の茎に対する葉の付き方)

下の写真は、草の茎から葉が生える様子を示したものである。
よく見ると、葉が茎の周りに回転しながら生えているのが見て取れる。
(回転せずに同じ部位に生える種類もあるが、それはとりあえず無視する)


この回転の角度は、ほとんどの植物の場合一定に保たれている。
植物を上から見ると、写真のようになり、葉が、円周状で均等にバラけて、重なっていないのに気づく。


重なると、上にある葉の影に入ってしまうので、「重ならない」のは、葉が光合成をすることから考えれば、有利な性質である。
では、どんな角度を取ると、この性質が得られるのだろうか?

実は、その答えが、黄金角(下図)なのである。

 


表面的な解説の多くでは、単に

「黄金角=重ならない」

と決めつけて、先に進んでしまうが、ここでは少し詳しくこの点を解説しよう。

そのために、シミュレーションソフトも作りました。

回転角度と葉っぱの数を入力すると、どんなふうに茎の周囲に葉がバラけるかを描画してくれる単純なソフトです。

 


さてこのソフトを使って、0〜5までの葉を、回転角36度から10度刻みで描いていくと、以下のようになる。
どの角度が、最も良い(均等にバラけている)だろうか?

 

36度、46度などの小さい角度では、葉が片側に寄ってしまって良くないのはすぐに解る。
また、166,176度のように、180度に近い角度でも、葉の位置が偏ってしまって良くない。

また、120度や90度のような360度を割り切れる角度に近いと、2周目に、前の葉と重なってしまう(ここでは、86,96、116,126)ので、やはりよろしくないのだ。



66度と136度は、一見同じようにバラけて見えるが、連続する3枚の葉の関係を見ると、


となる。連続する葉が重ならない事が重要なので、136度の方が、より良いことが解る。

なかなか、面白いでしょう。

葉の数が少なければ、まだ良いのだが、もっと葉の数を増やして、しかも重ならないようにすると、制限はどんどんきつくなっていく。
上の図では、136度がいちばん良さそうなので、、126度から146度の間で、葉の数を8つに増やして同じ計算をしてみると、

 


良さそうに見えるのは132〜138度である。この中のどれが一番良いか?このままだと解らないので、葉の数を13枚に増やしてみる。
そうすると、違いがよくわかる。

 

となり、132度の場合は、0と11、1と12、2と13が接近してしまい、135度の場合は、9から13まで全部重なってしまう。
138度の場合だけ、均等に分配されている。だから、究極の角度は138度の近くのはずだ。

で、今度は138度の付近で、、、、という感じにこの操作を、葉の数を増やして延々と続けると、角度はある一定の値に近づいていく。
そう、それが黄金角137.507・・・・・度である。

この値を入れて、葉の数60ぐらいまで描画してみると、面白い事が解る。

葉が均等にバラけるのはもちろんだが、起点の付近を見ると・・・・


なんと、ここに、フィボナッチ数が並んでいるのである。

松ぼっくりやロマネスコのらせんの正体も、下の図を見れば明らかだ。


 

起点(0)を中心に、時計回りに、13,26,39,52番目の葉が、等間隔で出現する。
反時計回りには、21,42,63・・とフィナボッチ数が公差になる等差数列が現れる。
葉の順番は、Z軸(茎)上の位置を表すのだから、これで斜め線(らせん)のできあがり。

以上のように、葉が重ならないためには、植物は黄金角で回転しながら葉を作らねばならない。
だから、進化の過程で、黄金角が選ばれるはず。そうすると、自然に葉序はフィボナッチ数になるのである。

証明おわり。




普通の説明が気に入らない理由

と言うわけで、フィボナッチ数の葉序は植物に有利であり、進化の過程で、それを選んだ植物が生き残った、と言うのが通常の解説のストーリーである。

えっ?

十分凄い?
納得した?

いやいや、最初に言ったように、「凄い!」と思うのは、本当のところは理解していない証拠です。
よーく考えてみよう。植物の実になって、じゃなくて植物の身になって。

本当に、フィボナッチ数の葉序は、そんなに有利だろうか?

さっきの図をもう一度みましょう。実は、ここでちょっとずるしてます。


確かに132度の方は、円周上で葉の重なりが有るが、それは11個前の葉との間である。
そもそも、太陽の光は、真上から来るのではないから、十分に上下に離れている葉との間の重なりが問題になるとは到底思えない。
だとすれば、それが進化に影響するはずがないではないか。

それに、100歩譲って葉っぱはそうだったとしても、種ができる時には、日陰とかは関係ない。
黄金角での回転は、ひまわりの種などを花の中心に均等に分布させるためにも働いている、という解説もあるのだが、均等に、しかも最大密度で分布させるには、6方格子が最適なのは自明である。

さらに、生物学者としては納得できないのは、137.05度などと言う半端な角度を、しかも極めて正確に決めることのできる原理について、一切説明が無い事である。
どんな仕組みにしたら、この面妖な角度がきまるのだ?
分度器なんか、植物は持ってないぞ。



生物屋の目から見た答えは・・・・・

と言うわけで、通常の説明では納得が行かないのだ。
だが、ジャパンカップはもうすぐだ。
それまでに、なんとかしないと、2,3,5,8,13の馬券しか買えないことになってしまう。

というわけで、以下が、筆者が考えたオリジナルの説明である。

まず、生物学者らしく、現在実験から解って(推定されて)いる、葉の原基のできるメカニズムから考えていく。

下の図は茎の成長点を模式的に表したものだ。
植物の場合、細胞分裂起きるのは先端部だけである。
(それ以外の部分の成長(拡大)は細胞そのものが大きくなることで起きる。)


成長すると、新たに茎の表面に新しい空間が生まれ、そこに葉の原基が順番に出現する。
この原基の形成には植物ホルモン(オーキシン)が一定濃度以上必要であることが知られている。

すべての細胞がオーキシンを産生しているが、古い原基が、オーキシンを吸収(分解?)するから、古い原基を中心にオーキシンの濃度が下がり、濃度勾配ができる。
つまり、古い原基が阻害的に働くので、新しい原基は、古い原基から出来るだけ遠いところにできることになる。

この逆に、古い原基から原基形成の阻害因子が放出されると考えることも可能だ。
この場合濃度勾配は、ちょうどオーキシンの場合をひっくり返した形になるので、理論的には、どちらの場合も同じように、新しい原基の位置を決めることができる。

この関係を利用して、オーキシンの濃度が一番高くなる(あるいは、阻害因子の濃度が薄い)角度を求めると、黄金角に近いものが出てくる事が、既に計算機シミュレーションによる研究で解っている。
それを認めてしまうと一件落着ということになるのだが、「シミュレーションでこうなった」と言うのは、いまいち十分に納得できるものではない。できれば、フィボナッチ数になることが直感的に理解できるような、そんな説明がほしいのである。

というわけで、ちょっと幾何の問題っぽく考えてみることにしよう。


まず、二つの原基が既にできており、3つめができる時の状況を考えてみる。
新しい葉はどこにできるだろう。
(阻害因子の方が、理解しやすいと思うので、ここでは阻害因子を放出しているとして、考えていくことにする。)


もし、1つ前の原基と2つ前の原基の影響が全く同じだとしたら、新しい原基は、円弧ACBのちょうど真ん中にできるはずだ。
しかし、より古い原基の影響は、新しいものよりも弱いと考えるのが妥当である。

この図は、簡略化のために、すべての原基を中心(成長点の中心)から同じ位置に描いているが、実際は、細胞が大きくなるにつれて分裂組織の中心から遠ざかっていくし、阻害因子が時間と共に減衰するかもしれない。
では、どのくらい差があると考えるのが妥当だろうか?

阻害効果が時間的に減衰するのであれば、効果は時間に対し指数関数的に減少するはずである。
また、阻害効果が拡散で伝わり、古い原基からの距離がキーになる場合も、拡散でできる濃度勾配は、距離に対する指数関数になる ので、同じ方法で計算できる。
この二つの組合せでも、同じである。

だから、とりあえず指数関数的に減少すると仮定して計算しても、それほど間違ったことにはならないはずだ。

 で、仮に減衰率を α としよう。、原基が一つ古くなるたびに阻害効果は 1/α になる。1つ前の原基の影響は 1/α 、2つ前の原基の影響は 1/α である。

新しい葉の原基は、すべての古い原基からの影響の和が、最も小さい地点にできるはずだ。
その地点は、下の図だと、円弧ACB1/α:1/αに分割する点である。



ちょっと、フィボナッチに似てきた。だが、これではまだαの値は決まらない。

そこで今度は、3つ前の原基の影響まで考慮に入れて考えてみる。

下の図のように、新しい原基から3つ前までの原基までの距離の比は、

DCDBDA1/α:1/α1/α

となる。

   


ここでもう一つ条件を加えたい。それは、

「回転の角度は常に等しい」

である。この条件を加えると、線分(円弧)DBACが等しくなる。 
つまり、

DB=AC=1/α


ということになり、、、、あれれれれ


こ、この関係は・・・なんか黄金比のと似てる?
というか、黄金比の定義そのものだ。

従って、α=φは自明。

まとめると、

@  ひとつ前の原基の阻害効果が一定の比率で減衰する(ただし四個以上古いものは無視)

A  原基の回転角度は常に一定

と仮定すれば、自動的に回転角度=黄金角になってしまうのだ。

上に書いたように、一定比率で減衰する、という仮定は特に恣意的でない。
現実の植物で、どのような原理で阻害効果の減衰が起きるのかはわからないが、それがどんなものであっても、@の仮定はそれほど変えずに適用できると思う。
また、Aはほぼ全てのらせん葉序を持つ植物で成り立つ。

影を作るとか作らないとかには関係なく、必然的に黄金角なのだから、パイナップルや松ぼっくりのらせんの理由も説明には困らない。
さっきの図で示したように、黄金角の回転をすれば起点の近くには、フィボナッチ数しかないんだから。
右向き螺旋も左向き螺旋も、フィボナッチ数のらせんが必然的にできてしまう。
どのフィボナッチ数を選ぶかは、実の円周と種が何個並べるか、で決まるだけ。

というわけで、分割点を決めるやり方そのものが、黄金比の定義と同じなので、角度が黄金比になるのは、不思議でも神秘的でも無く、あたりまえなのである。

やれやれ、これでフィボナッチ馬券を買わないで済むことになった。よかった、よかった。

 

もしかすると、とっくの昔に誰かが同じアイデアを言っているかもしれません。もしそうなら、メール等でご指摘いただければ幸いです。また、この証明は「ダメだぞ〜〜」とか、もっと良い証明がある、というご指摘も、もしあればぜひ送って下さい。筆者自身も、この証明は大筋では悪くないと思うのだが、いくつか気になる点があり、まだ改良することが可能であるという気がしている。問題点としては、古い原基の位置関係を二次元にしてしまっているが、現実には三次元なので、それを計算に入れないといけない事。あと、「回転の角度が一定になる」と、アプリオリに決めてしまっていること。この条件自体も、もっと自然に導かれるものである方がしっくりする。回転角の初期値は任意の値であっても、次第に黄金角に収束していくような、そういう原理が一番好ましいと思う。なぜなら、そのほうがもっとフィボナッチに似ているから。誰か、素晴らしい証明を思いついた人は、ぜひ教えてください。



残りの疑問

さて、それでも、疑問な点は残っていると思う人もいるだろう。

5,8、13くらいまでは、良いとしても、89とか144とか本当にこんな原理で決められるのか?

コラムの冒頭に挙げた例は、見事にフィボナッチだったが、もっと極端に大きな数の例を探してみる。
ほとんどの解説文で、ひまわりがフィボナッチと書いてあるのでひまわりで数えてみよう。


あれ?あれ?あれあれあれ?

これ、2848だ。全然フィボナッチになってないぞ???

何かの間違いかもしれないので、フィボナッチ数の解説があるwikipediaのページのひまわりの写真で数えてみる。
この写真には、「ヒマワリの種の数をらせんに沿って数えていくとフィボナッチ数が現れる。」がキャプションついているので、鉄板のはずだ。

 

ありゃりゃ??22だ。やっぱりフィボナッチ数じゃない。

フィボナッチからずれてしまう理由は、花をよく見れば明らかだ。

図の部分の螺旋が途中から二本に分かれてしまっている。



ひまわりの場合、種は平面上に並ぶので、中心から遠くなるとどうしても隙間ができる。
そこにも種ができてしまうので、らせんの数がローカルに増えてしまうのだ。
ここまで大きくなると、正確にフィボナッチ数にするのは、無理なのだろう。

でも何故か、どの解説を読んでも、「ひまわりはフィボナッチ(きりっ)」と書いてある。
なんで?

理由はおそらく、多くの人は、自分で数えてなんかいないからである。
フィボナッチの神秘のパワーに目がくらんで、確かめもせず信じてしまったのだ。

はい、こーゆーのなんと言うんでしたっけ?

そうです。ジンクピリチオンです。

このことから、数学こそ最強のジンクピリチオンであることが解ります。

ふつう、数学の証明というのは、理解するのが難しい、というか、常人にはまるで理解不能な領域のものが多い。
だから、自分で理解してみよう、という気にはならない。
ポアンカレとかラマヌジャンとかフェルマーの世界に住んでいる人たちは、一般人から見れば、超人か宇宙人である。

皆さんの中に、フェルマーの最終定理の証明を「理解した」人、一人でもいますか?
もちろん筆者もちんぷんかんぷん、というか、理解しようと言う気にすらなりません。
だが、理解できなくても「フェルマーの最終定理が証明された」事実をみとめないわけにはいかない。
理解できないのは、こちらのお頭の能力の問題なのだから。
お代官様と同様に、数学様にはさからえないのである。

そういう状況に慣れると、
数学様の言うことは、わからなくてもすべてが正しい
、と盲目的に感じるようになってしまう。

フィボナッチ競馬必勝法はこうして生まれる。
ついでに言えば、最近の「これからは数学との融合が生命科学には必須」という方向性(誰が決めたんだ?)にも、なんだかそんなところがある。
よく考えずに、勝手に過大評価して数学様にすがっているように思えて仕方ない。

もちろん、数学的なアイデアが、生物学の問題の解決、それも非常に根本的なレベルでの解決につながることは十分にありうる。
生物学史上最大の発見であるメンデルの法則は、歴とした数理モデルであるし、チューリングの反応拡散モデルは形態形成の理解に必須のものになりつつある。
しかし、そういう極めつけの成功例には、前提として「現象の本質を見抜く目」が必須であり、道具としての数学の役割はそれほど大きくはないのだ
そこんトコロを解っているのだろうか?

「データを採りまくってそれを数学で処理すれば万事解決」みたいなご意見を聞くと、なんだか、フィボナッチ馬券を買いまくってるのを見ているようで、心配になるのです。

みなさん、どう思われたでしょうか?ご意見をお待ちしております。

最後に一言。

実は、フィボナッチの理論をHPで紹介している証券会社はたくさんありますが、その中でも「ひまわり証券」という投資会社が有るそうです。
そこの社員のみなさん、だれもひまわりのらせんを数えたことなんか、無いんだろうなぁ。

おしまい。


ヒマワリの種の場合、らせんの数が少ない時(40以下)は大抵フィボナッチになっています。それ以上の場合は、らせんが途中で乱れ、数えにくくなります。筆者の知人の数学科の先生が、学生に数を勘定させてところ、1000ぐらい数えて、ほとんどフィボナッチになっていた、という結果だったそうです。しかし、話をよく聞いてみると、数えにくい花、すなわちらせんが乱れた花は全て「数えにくい」と言う事で除外していた事が解りました。筆者がネットで見つけた「大きなひまわりの花」で試したところ、どれも一部にらせんの分岐があり、正確にフィボナッチ数であった物は10%以下(0/10)でした。