(2)模様の謎1: シマウマの模様は何の役に立つ?


動物の模様に関する一つ目の謎は、「なぜ動物はあのようにきれいな模様を持つのか?」です。



動物園に子供から寄せられる質問で、一番多いのが、「シマウマはどうして縞があるの?」だそうです。 
確かに不思議です。 
ふつう、野生の草食動物は、肉食動物に見つからないように、背景にまぎれるような色合いをしています。
普通の野生の馬だって、基本的には茶色一色です。 




シマウマが、あんなに目立つ模様を持っていれば、どう考えたってライオンなどに見つかりやすいはずです。それなのに、なぜあんな目立つ模様をしているのでしょうか?

動物園から帰ってくる答えは、
「実はあの模様は目くらましになっているのです。
シマウマが集団で居ると、シマとシマが重なって、一頭の輪郭がわからなくなり、ライオンには巨大なお化けに見えるので、襲うことが出来ないのです。」
というものです。

う〜〜ん。どうでしょう。皆さん、納得できますか?

私には、縞がそんなに効果絶大とは思えません。
なぜなら、TV番組でライオンやチータがシマウマに飛び掛っていくのを、何回と無く見ているからです。
それに、ライオンだって馬鹿ではないので、「大きな縞の塊は、餌が集まっている」と言うことを学習してしまうはずだと思います。

縞が目立つか同化に関しては、アメリカの大統領セオドアルーズベルト(テディベアの生みの親)が面白い話をしていたそうです。
「わしゃあ、何度もサファリに行ったが、あのシマウマほど遠くからでもはっきり見える動物はおらんよ。模様が目くらましになるなんて、大ウソだね。」(近藤による大幅な脚色あり)

さらに、もし縞模様がそんなに生存に有利であれば、サバンナのほかの動物はなぜ縞を持っていないのか?
馬類にしたところで、シマウマ以外の馬は、縞なんて持っていないのです。




さらに、同じような模様を持つ生き物が下の写真の様にたくさんいますが、そもそも、シマが見えるような生活をしていません。
いったい、何を好き好んでこんな模様をしているのでしょうか?




一番右は、ゼブラウツボです。
岩礁地帯では最強です。しかも夜行性ですので、隠れる必要はほとんどないです。
真ん中は舌平目の一種です。
普段は、砂に潜って目だけ出してます。縞があっても誰も見てくれません。
右は、ヒラムシ(プラナリアの一種)です。
ヒラムシを食べる動物はあまりいません。しかも、こいつは原始的な目しか持っていないので、縞を見ることもできません。
というよりも、そもそも脳らしいものがありません。

というわけで、縞を持つ生き物はたくさん居て、しかも、どいつもこいつも、縞の意味は全然解らないのです。


模様が役に立たなくたってよいではないか、という気もしますが、、そうなると、どうやって模様が進化できたのかが解らなくなります。 
すこし、詳しく説明しましょう。
現在、ダーゥインの「自然選択説」が進化の原理として認められています。 

自然選択説が正しいとすれば、ある形質(特徴)が選択されるからには、何らかの生存(子孫を残す)に有利な面がなければなりません。 
シマウマのようなビビッドな模様を作るためのメカニズムは、結構複雑であると思われますから、
それが自然選択で作られるからには、それなりの有利さがなければならないのです。

実は、一見不利に見える性質が進化した例が知られています。



ヘラジカの角、サーベルタイガーの牙、クジャクの羽根などです。
これらは明らかに生存には不利に見えますが、その代わり「そういう性質を持つオスはメスに好まれる」、という有利な点があると考えられています。
オスは、どんなに強くても、メスに選ばれない限り、子孫を残せません。
そのため、一見生存には不利でも、こうした性質は子孫を残す確立を増やす、と推定されるのです。
言い換えれば、この奇妙な角は、子孫を残すのには、やはり有利であり、自然選択説に矛盾はしないのです。

ちなみにメスは、こんな奇天烈な角を持ってません。自然界では、オスは余りまくっているので、メスはわざわざ不利な性質を持つ必然性はありません。
というわけで、性淘汰の場合、オスだけが生存に不利な特徴を持つのです。

で、模様の場合は、というと、残念ながらほとんどの場合、オスメスおんなじ模様をしています。
というわけで、模様進化は性淘汰っぽくないのです。

じゃあ、どうやって進化したのか・・・・・
う〜〜ん、謎だ!

模様の謎2へ



home