・生命現象を物理的に理解していく

さて,このチャプタでは運動方程式を理解し,さまざまな生命現象を物理的に理解していくことを目指しましょう.
生命現象もれっきとした物理現象です,そこには(たぶん)超常現象などは存在しません.
ただし,その原理についてはまだまだ我々の理解を超えたものがあります.
現在の学問はまだまだ完全なものではありません.
ひとつひとつ未解決の事項を明らかにしていくのがサイエンスです.

そこで,現在のところ完成されている運動方程式でまずは理解していきましょう.
ここで,断っておかなければならないのが,今回ここでお示しする表現が決して一般的に通用するものではないことをあらかじめ理解してください.
生命現象(特に我々の特化している分野)を理解する上での表現となりますので,その導き出し方,定義,さらには数学的にも間違っている可能性がとっても大です.
もし,なにか不適切,間違った表現がありましたら,ぜひ石島までご連絡ください.

・運動方程式
さて,運動方程式を理解するには,数学の助けを借りることが重要です.
数学を使う前に,直感的に運動方程式を理解していきましょう.
運動方程式とは,この世界(地球上でも,宇宙でも)の物体の運動の様子を理解するものです.
特殊な状況(量子力学の世界,極端(極低温,超高温,高圧など))以外ではほとんどの物体の運動を記述できます.
ロケットをとばして,土星や木星に到着させたり,ハレー彗星など予測したり,などなど.

この運動方程式は大きく分けて,3つに分類できます.
それは,
 慣性力
 粘性力
 弾性力

です.
これらをきわめて単純に説明すると,

・慣性力
ある質量を持った物体がその状態を維持したがる状態,と言えます.
“車は急に止まらない”にあるように,突然止まったり,方向転換できない様子です.
逆を言うと,物体に力を与えると,その運動が変化します.

・粘性力
普通に歩く時より,水中を歩く方が余計な力が必要となります.
これは,水がその物体の運動を妨げる方向に働くからです.
その妨げる力は物体の速度が上がるほど大きくなります.
これを粘性力と呼びます.
もちろん,水だけでなく空気にも粘性力が存在します.
だから,最近の車はいかに空気抵抗(粘性力)を低く抑えるか,と努力しているのです.

・弾性力
すべての物体には,バネのような性質を持っています.
バネのような性質とは,物体にある力を加えると変形し,力を取り除くとまた元に戻る性質です.
もちろん,物体によってその大きさは違います.
ダイヤモンドでも大きな力を加えると変形します.
このような性質を弾性率,と呼びます.

これら三つの性質が物体に及ぼすことを記述したのが運動方程式です.
この三つはいつも均等に働いているのではなく,ある時にはどれかが大きく,どれかが無視できるぐらいになります.
一つの例を述べますと,釣り竿,を思い浮かべてください.
大きなカジキなどを釣る釣り竿を持ち上げるのも大変,でも川での釣りに使う釣り竿はひょい,と持ち上げられます,これが慣性力.
釣り竿を空気中で振ると,ビヨンビヨンと行ったり戻ったり,これが弾性力.
ビヨンビヨンはいずれ収まります,空気や内部の抵抗で,これが粘性力.
もし,釣り竿を水の中で振り回すと....空気中より力がかかり,ゆっくりとですが,元に戻ります.あまりビヨンビヨンせずに.....これは粘性抵抗が大きなウェイトを占めてきたからです.

さて,実際にこの三つの性質を理解していきましょう.

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