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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)95

講演者 斎藤通紀(京都大学大学院医学研究科生体構造医学講座機能微細形態学 教授)
演題 「生殖細胞発生機構の解明とその試験管内再構成」
講演者 原健士朗(基礎生物学研究所生殖細胞研究部門 助教)
演題 「マウスの精子生産を支える幹細胞の動態」
日時 2014年1月29日(水)16時15分〜18時00分
場所 生命機能研究科ナノバイオロジー棟3階セミナー室
世話人 世話人:田村淳・矢野智樹(生命機能研究科)
Tel:06-6879-3322
e-mail:tsukitastaff@biosci.med.osaka-u.ac.jp












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実施報告

報告

 2013年1月29日に第95回生命機能研究科研究交流会が開催されました。今回は基礎生物学研究所生殖細胞研究部門の原健士朗先生と京都大学医学研究科生体構造医学講座微細形態学の斎藤通紀先生がご講演くださいました。
 初めに、原先生から「マウスの精子生産を支える幹細胞の動態」についてのご講演をいただきました。
 哺乳類の精巣では精子幹細胞が自己の維持と精子の分化を両立して行っています。精子幹細胞については明らかになっていないことが多く、これまで精子幹細胞の分化は不可逆的に起こると考えられていました。しかし、今回の原健士朗先生の研究によって、これまで考えられていたモデルとは異なる精子幹細胞の実体とそのダイナミクスが明らかになりました。
マウス精巣において最も未分化な細胞であるAsingle (As) 精原細胞が分化する際に、娘細胞同士は繋がった状態で残り、分化が進むにつれて繋がった細胞の数は増加します。精子幹細胞の運命を調べるために、パルス標識したAs細胞を追跡すると、一細胞レベルでは細胞の運命はバラバラだが、集団レベルでは一定の運命をたどっており、細胞の構成比も維持されていました。さらに、マウスの精巣のin vivoライブイメージング実験によって、As細胞において自己複製と分化の両方が観察され、また分化し繋がった細胞の断片化も観察されました。数理モデルにおいても、in vivoの現象を説明することができることが示されました。これまでは、As細胞のみが幹細胞で分化は不可逆的に起こると考えられていました。しかし、今回の研究によって、分化後の細胞が断片化し、未分化な状態に戻ることができることが示され、精子幹細胞は異なる状態を行き来できることが明らかになりました。
 コロキウムの後半では、斎藤通紀先生より「生殖細胞発生機構の解明とその試験管内再構成」に関するご講演をいただきました。
 精子や卵母細胞といった生殖細胞は全能性を持ち、次の世代を作るために必須の細胞です。しかし生殖細胞が全能性を得るメカニズムはまだ十分に判明していません。斎藤先生の今回のご研究では始原生殖細胞の人工的な作製に成功し、生殖細胞形成メカニズムの一端を解明されています。
サイトカインを用いてES細胞やiPS細胞から始原生殖細胞様細胞を誘導し、精巣に移植すると精子に分化しました。また、再構成卵巣に移植することで卵子にも分化させることができました。これらの生殖細胞と通常のマウスの生殖細胞を受精させることによって、健常な子孫が産まれたことから、正常な生殖機能を持っていることが示されました。また、サイトカインは用いず、転写因子で生殖細胞を誘導できるかを調べられました。転写制御因子Blimp1, Prdm14, Tfap2Cを強制発現した細胞を誘導し、精巣や再構成卵巣に移植することによって、同様に精子や卵子が形成され、健常な子孫に貢献することも分かりました。また、これらの転写制御因子の発現を中胚葉因子Tが直接誘導していることが明らかになりました。現在は、よりヒトに近いカニクイザルを用いた研究が進められていらっしゃいます。
  コロキウム後はナノ棟1階に場所を移して懇親会が開かれました。研究に関する活発な議論が続き、参加者間の親睦が深められました。     
(分子生体情報学博士課程2年 武知真希)


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