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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)93

講演者 小島正己((独)産業技術総合研究所/JST,CREST 研究グループ長)
演題 「うつ病のsegmentationの分子神経生物学」
講演者 櫻木繁雄(生命機能研究科 神経可塑性生理学研究室(小倉研究室))
演題 「鏡像的なシナプス可塑性におけるTrkB・p75NTR経路の関与」
日時 2013年11月27日(水)16時00分〜18時00分
場所 生命機能研究科ナノバイオロジー棟3階セミナー室
世話人 世話人:冨永(吉野)恵子(生命機能研究科 准教授)
TEL:06-6879-4662
e-mail:tomyk@fbs.osaka-u.ac.jp












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実施報告

 第93回生命機能研究科研究交流会は、特別講演には産業技術総合研究所から小島正己 先生をお招きし、「うつ病のsegmentationの分子神経生物学」というタイトルで話していただきました。また、小島先生と同じ分子について研究している生命機能研究科神経可塑性生理学研究室の櫻木繁雄氏が講演を行いました。
 両氏の講演は、神経成長因子であるBDNF、およびその前駆体であるproBDNFが脳の機能や病態にいかに重要であるかを示すものでした。30人以上もの参加者と共に、非常に活発な質疑応答がなされ、講演後の懇親会でも、両氏と参加者の間で有意義な議論が行われました。
 小島先生の講演内容は、うつ病とBDNFとの関連についてです。現代においてうつ病は、非常に大きな社会問題の一つですが、その診断方法は問診・視診が主で、確実な診断マーカーが未だありません。また、抗うつ薬の開発とともにその種類は増えたものの、患者数は年々増加し、特に、患者のうち約三割が抗うつ薬抵抗性を示す難治性うつ病で、その分子病態の解明と確実な治療法が待たれています。
 近年、うつ病患者の血中BDNF量が低下していることが発見され、うつ病とBDNFとの関連が注目されるようになりました。小島先生は、BDNFのプロセシングが困難になった変異体マウスを用いた研究を紹介されました。この変異体マウスでは、BDNF量の減少、海馬での神経細胞の形態変化、うつ病様異常行動、前頭前野の活動低下などが見られ、うつ病モデルとして期待されます。また驚くべきことに、この変異体マウスにおいては、抗うつ薬が効果を示さないことから、前駆体であるproBDNFからBDNFを産出する機構における障害が、難治性うつ病の原因であるという可能性を指摘されていました。さらに、血中BDNF量の迅速測定機の開発についても紹介されました。小島先生のお話から、この仮説に基づいた治療法や診断法の一日も早い確立が期待されました。
 櫻木氏の講演は、繰り返し学習のインビトロモデルにおけるTrkB・p75NTR経路の関与についてです。神経可塑性生理学研究室では、記憶のモデル現象として、繰り返し可塑性誘発刺激による長期構造可塑性現象(RISEとLOSS)について研究しています。櫻木氏は、RISEがBDNF-TrkB受容体シグナル経路によって、LOSSがproBDNF-p75NTR受容体シグナル経路によって、引き起こされることを解明しました。つまり、RISEとLOSSという鏡像現象が、proBDNFとBDNFの陰陽的効果によって引き起こされるということです。同一遺伝子から発現するBDNFとproBDNFを、神経細胞が如何にして制御するか。そのメカニズムの解明、ひいては記憶の細胞メカニズムの解明は、今後の研究に期待されます。

(神経可塑性生理学研究室 四回生 水山 遼)


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