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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)92

講演者 戎家美紀(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター チームリーダー)
演題 「人工遺伝子ネットワークの開発 - 細胞運命を非対称化するしくみの再構成 -」
講演者 若山照彦(山梨大学生命環境学部 教授)
演題 「人工生殖技術の開発 - クローンから宇宙での生殖まで -」
日時 2013年10月24日(木)16時00分〜18時00分
場所 生命機能研究科ナノバイオロジー棟3階セミナー室
世話人 世話人:木村宏(生命機能研究科 准教授)
TEL:06-6879-4623
e-mail:hkimura@fbs.osaka-u.ac.jp












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実施報告

 第92回生命機能研究科研究交流会では、理化学研究所・発生・再生科学総合研究所ユニットリーダーの戎家美紀先生と、山梨大学生命環境学部教授の若山照彦先生にご講演いただきました。
 戎家先生には、「人工遺伝子ネットワークの開発~細胞運命を非対称化するしくみの再構成~」という演題でお話をいただきました。戎家先生は細胞間コミュニケーションに興味を持ち、人工遺伝子ネットワークを構築することで細胞集団が非対称化する仕組みを再現する研究を行っています。今回の公演では、Delta/Notch signal circuitを人工的に構築した研究についてお話いただきました。Delta/Notchは互いに抑制することで、細胞間における非対称化を促し、細胞分化のパターンを形成することが知られています。そこで、戎家先生はDelta/Notchを持たない細胞にこの経路を単純化した人工遺伝子ネットワークを導入することで、非対称化する過程の再現をライブイメージングで観察することに成功しました。また、多細胞における非対称の割合は細胞密度に応じて常に一定となることを数理モデルから解析し、細胞モデルでも確認することができました。そして、非対称化によって様々な分化パターンが形成される過程をより生体に近づけた再構築系を立ち上げていくなど今後の方針についてもお話しいただきました。
 若山先生には、「人工生殖技術の開発~クローンから宇宙での生殖まで~」という演題でお話をいただきました。若山先生は、様々な人工生殖技術の開発に携わられました。精子保存開発では、従来超低温でしか保存できない精子を室温で保存できるフリーズドライ技術を確立されました。この技術により、DNAが壊れていなければ人工生殖が可能であることを示されました。クローンマウスの作製においては、出産率が1.1%と非常に低く、実用化するためには、成功率の改善・健康な個体作出が課題となります。そこで、若山先生は体細胞核を受精卵への初期化が不完全であるためだと考え、作業過程に用いる試薬を変えることやヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で処理することで、出産率を13%まで改善できました。また、マウスの他にも絶滅動物や絶滅危惧種の人工生殖技術の開発にも現在取り組まれており、16年前に凍結保存されたマウスからクローンを作製することに成功しました。この結果から「マンモスの復活も夢じゃない」と考えるかもしれませんが、復活には膨大な量のゾウと時間が必要となり、今すぐには難しいだろうなどの裏話もしていただきました。さらに今年の8月には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究で宇宙放射線による影響を検討するために、フリーズドライ精子がスペースシャトルに乗せられ宇宙へと打ち上げられました。来年には宇宙を経験した精子を人工授精させた宇宙マウスが世界で初めて誕生するかもしれません。この実験によって、人及び家畜が宇宙で繁栄できるかどうか、果てはノアの方舟計画などに繋がっていくという夢のようなお話もしていただきました。
 お二人のご講演では、サイエンスを楽しむ姿勢の大切さについて再確認しました。また、華やかな研究の成功例だけでなく、失敗例についての貴重なお話もしていただきました。研究で大きな壁に直面した時こそ、楽しむ姿勢を忘れずに継続することが魅力的な研究結果に繋がるのだとお二人のご講演から強く感じました。また、セミナーには満席になるほどの聴衆に参加していただきました。そして、講演後の質問、意見交換会では活発な議論が展開され、親睦を深めることができました。

生命機能研究科 博士課程1年 大倉健太


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