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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)99

講演者 服部光治(名古屋市立大学大学院薬学研究科・教授)
演題 「脳の形成と機能に重要な分子リーリンの機能解明と、その創薬への応用」
日時 2014年7月18日(金)16時00分〜17時30分
場所 生命機能研究科 ナノバイオロジー棟3階セミナー室
世話人 世話人:白崎竜一(生命機能研究科 准教授)
Tel:06-6879-4635 内線:4635
e-mail:shirasaki@fbs.osaka-u.ad.jp












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実施報告

【服部先生コロキウム要旨】

脳の形成と機能に重要な分子リーリンの機能解明と、その創薬への応用
名古屋市立大学大学院薬学研究科 教授 服部光治

哺乳動物脳では神経細胞は層構造を形成しており、これは正常な機能発現に必要である。突然変異マウス「reeler」で欠損する巨大分泌タンパク質「リーリン」は、層構造形成に必須であるが、その機能は未だ理解されていない。また近年、リーリンの「機能低下」が精神神経疾患の発症や増悪化に寄与することが多く報告されている。しかし、リーリンの機能低下と疾患をつなぐ分子メカニズムは完全には理解されておらず、これを改善する方法も存在しない。我々は、リーリンの機能とその調節機構を理解することを目的に研究を進めてきた。そして最近、リーリンの新規受容体の候補を同定し、これを介して層構造形成の最終段階が制御されていることを見いだした。また、リーリンを不活化する酵素の同定に成功した。その阻害剤はリーリン機能を増強し、精神神経疾患を改善する可能性を秘める。本講演ではリーリン研究の歴史を踏まえて我々の知見を紹介し、残された問題を解決するには何が必要なのかを議論したい。

【報告】

2014年7月18日に生命機能研究科第99回研究交流会が開催されました。今回は名古屋市立大学大学院薬学研究科教授の服部光治先生にお越しいただき、「脳の形成と機能に重要な分子リーリンの機能解明と、その創薬への応用」というタイトルでご講演していただきました。当日は50名以上の参加者があり、活発に意見がかわされました。
最初に服部先生がこれまで研究に携わってきた、哺乳動物脳に発現している巨大分泌タンパク質「リーリン」に関する歴史や知見について説明していただきました。1950年代に歩行時によろめく表現型を持つ突然変異マウス「reeler」が発見されました。「reeler」マウスにおける小脳は非常に小さいという他に、野生型では層構造を形成する大脳において、層構造が崩れるといった異常が見られることが報告されていました。その後、1995年に「reeler」の原因遺伝子としてリーリンが同定されました。リーリンは3461アミノ酸残基からなる巨大分泌タンパク質で、N末端領域、8回の繰り返し配列(リーリンリピート)、塩基性アミノ酸に富むC末端領域で形成されています。また、リーリンはリポタンパク質受容体であるApoER2、VLDLRと結合し、細胞内タンパク質Dab1をリン酸化することによってシグナル伝達を行うことが知られています。しかしながら、リーリンの詳細な機能についてはあまり理解されていませんでした。そこで最新の服部先生の研究成果を未発表データを含めて説明していただき、層構造形成の最終段階におけるメカニズムについて講演してくださいました。また、後半においてはリーリンのシグナルカスケードを利用することによる疾患治療について講演してくださいました。リーリンは成体脳においても機能していることが知られ、リーリンと疾患との関わりについて多数の報告がなされてきています。ヒトでのリーリンの欠損は滑脳症を引き起こすほか、統合失調症、自閉症の発症と相関があることが報告されています。また、マウスを用いた詳細な解析により、リーリンの機能低下によりアルツハイマー病が悪化することが示唆されています。よってリーリンを用いた疾患治療が期待されています。最近の服部先生の研究において、リーリンを不活性型に分解する酵素を同定することに成功しました。この阻害剤はリーリンの機能を増強し、疾患治療に役立てると考えられます。今後、マウスにおけるさらなる解析、ヒトにおける阻害剤の効果の検証などを行っていくとのことです。これらの研究成果より、新たな治療方法、薬剤が開発されることを期待しています。講演後の質疑応答では多くの質問があり、白熱した議論が繰り広げられました。


(細胞分子神経生物学研究室博士課程1年 金山武司)


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