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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)18

講演者 Professor Aaron Ciechanover (2004年ノーベル化学賞受賞者 Tumor and Vascular Biology Research Center,The Rappaport Faculty of Medicine,Technion-Israel Institute of Technology, Haifa , ISRAEL)
演題 "Ubiquitin-Mediated Proteolysis of Cellular Proteins:
From a Vague Idea, thru Basic Mechanisms and onto Human Diseases and Drug Targeting."
日時 2006年 2月22日(水) 午後5~6時
場所 大阪大学 銀杏会館 阪急・三和ホール
世話人 座長:平野 俊夫 研究科長
世話人:仲野 徹












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実施報告

 今回の研究交流会は、ユビチチン経路の発見による功績により2004年ノーベル化学賞を受賞された、アーロン・チカノバー教授を特別講演にお迎えし開催されました。いまや、ユビキチンはポリユビキチン化によるタンパク質の分解に関わるだけでなく、モノあるいはオリゴユビキチン化によるエンドサイトーシスや転写因子の活性の制御など、ありとあらゆる生命現象に深く関与しています。このようにユビキチン経路を知らない研究者は皆無であることもあり、講演では研究のディテールではなく、ユビキチンの発見の経緯を中心に、大発見にはつきもののドラマについても話をされました。研究を始められた当時は、DNA→RNA→タンパク質というセントラルドグマにしたがってタンパク質合成の研究が主流であり、いったん合成されたタンパク質は安定して存在する静的なものというのが常識の時代で、タンパク質分解についての研究は見向きもされなかったそうです。こういう流行に流されることなく、網状赤血球のライセートにはタンパク質分解活性があるが、イオン交換カラムで2つの分画に分けると活性がなくなってしまう。この2分画を混ぜてATPを加えると活性が復活するという論文を1978年に発表されましたが、タンパク質の分解にエネルギーが必要であるというのは熱力学の基本に反しており、非常に懐疑的に見られたようです。博士はそういうことは意に介せず、逆に参入する研究者が少ないのをポジティブに捉えて研究を進めたことで、ユビキチンはE1、E2、E3の3つの酵素により標的タンパク質のリジンに共有結合していることや、ユビキチンのリジンにさらにユビキチンが結合したポリユビキチンがタンパク質分解のシグナルになっていることなど、ユビキチン経路の基本骨格を確立することができたそうです。また、最近の話題として、PS-341(プロテアソームインヒビター)による多発性骨髄腫の治療について話されました。多発性骨髄腫はベンス・ジョーンズ蛋白を多量に産生しており、フォールディングが異常になったものをユビキチン経路で処理することにより小胞体ストレス反応を回避しているようで、インヒビターの投与によりプロテアソーム活性を半分程度に抑制すると、腫瘍細胞特異的に細胞死を誘導できるそうです。
  講演をとおして、生物学的に重要な意味を持つと思うテーマは流行に左右されることなく追い求めることが大切であるということを強調されており、研究の基本姿勢を再確認するのにも有意義な講演でした。


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