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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)16

講演者 狩野 方伸 教授 (医学系研究科)
演題 「逆行性シグナルを介する短期シナプス可塑性のメカニズム」
講演者 冨永(吉野)恵子 助教授 (生命機能研究科脳神経工学講座・神経可塑性生理学研究室)
演題 「長期シナプス可塑性のガラス器内再現と機構解析へのアプローチ」
日時 2005年 12月14日(水) 午後5~7時
場所 大阪大学生命機能研究科ナノバイオロジー棟・3階セミナー室
世話人 小倉 明彦












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実施報告

狩野教授は、DSI(Depolarization-induced Suppression of Inhibition)について最近の解析結果を紹介された。DSIは海馬の抑制性シナプスで、シナプス後細胞の脱分極があると、シナプス前細胞から抑制性伝達物質GABAの放出が抑制されるという形式のシナプス可塑性で、回路の効果としては促通(興奮性の増大)であるが、機構としてはLTDと相同な抑制型の短期可塑性と見なされる。シナプス後細胞の反応が前細胞で表現されるという特徴から、逆行性伝達物質の関与が想像されていたが、狩野教授は巧妙な薬理学手法と電気生理学手法を組み合わせ、その実体が内在性大麻様物質(endocannabinoid; EC)であることを証明された。また、小脳LTDの成立機構についてもECの関与を含む新たな仮説を示された。

冨永助教授は、短期可塑性が長期可塑性に変換されていく過程について、長期培養海馬切片という実験系を用いての解析結果を紹介し、独自の仮説を提唱した。LTPは既存のシナプスにおける伝達効率の変化、すなわち短期可塑性であるが、これを繰り返し引き起こしたところ、シナプス新生を伴う回路そのものの変化という長期可塑性に発展した。また最近、LTDを同様に繰り返し引き起こすと、シナプス廃止を伴う抑制型の長期可塑性に発展することを見出した。冨永助教授は、短期可塑性の繰り返し誘発によって信号タンパクの段階的発現と修飾が起こり、形態変化を導くとの仮説を唱えている。

両講演ともユニークな知見がふんだんに含まれ、神経科学の最前線はこうして切り拓 かれていくという実感のあるもので、教科書的な確定知識に馴れた院生諸君には初耳 のことばかりの、刺激の多いものであった。講演後、1階ロビーにて、クリスマスシ ーズンに因んだケーキパーティを開いて懇談した。(小倉明彦記)


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