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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)103

講演者 西山雅祥 ((京都大学 白眉センター・特定准教授))
演題 「力学刺激で細胞運動を操作する」
講演者 園部誠司 ((兵庫県立大学大学院生命理学研究科・准教授))
演題 「原生動物の運動」
日時 2014年12月10日(金)16時00分〜18時00分
場所 生命機能研究科生命システム棟2階セミナー室
(※ナノバイオロジー棟3階セミナー室より変更/細胞棟南側の新棟です)
世話人 世話人:南野徹
Tel:06-6879-4625
E-mail:tohru@fbs.osaka-u.ac.jp












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実施報告

講演者:西山 雅祥先生 京都大学 白眉センター・特定准教授
講演タイトル 「力学刺激で細胞運動を操作する」

 大腸菌はわずか1μm程度の菌体の周囲にべん毛という運動器官を数本備えていてこれを回転させることにより最適な環境へと泳ぎまわる。べん毛の根本に存在する回転モーターは、細胞内外で形成されたプロトンの電気化学ポテンシャル差を利用して回転する。これらの生命活動を維持するために大腸菌の細胞内は数千種類もの蛋白質や生体分子でみたされているが、そのうち約70%は細胞内の蛋白質を取り囲む形で存在している水であり、酵素活性などの生命活動に必須な化学反応を司っている。この蛋白質と水分子の相互作用が変化すると蛋白質の構造、それに伴う機能も変化するだろうという仮説のもとに西山先生は高圧力下で蛋白質の構造や機能の変化を観察された。まず、高圧力顕微鏡を使い大腸菌の遊泳運動を観察したところ、 圧力の増加とともに泳ぐ菌体の割合とその速度が低下し、80MPaの圧力下ではすべての菌体が遊泳をやめたが、圧力を下げていくに従い運動能は回復したそうだ。そこで高圧下ではべん毛モーターの回転に支障が出るのだろうと予測を立て、モーターの回転を計測したところ、遊泳運動が停止した80MPaの圧力下でもモーターは回転を止めずに反時計方向に回転していた。そのあと更に圧力を120MPaまで高めたところ、興味深いことにモーターの回転が①時計方向②回転方向が頻繁に変わる③反時計方向④停止、するものが観察された。このあと圧力を定圧力まで下げたところ、約半数のモーターは反時計方向に回転しだしたが、残りの半数は停止したままだった。そこで圧力に対して可逆的に回転したモーターを解析したところ、圧力の増加とともに反時計方向に回転するモーター以外の状態が増加し、100MPa付近から時計方向に回転するモーターの確率が増加した。 シグナル伝達過程における応答制御因子である蛋白質CheYがリン酸化されモーターに結合するとモーターの構造が変化し、時計方向へ回転すると言われているが、西山先生らは、高圧力によりCheYがリン酸化されてモーターに結合したかのようにモーターの構造が変化し、結果として時計方向に回転したのではないかと推察された。このような高圧力技術は細胞の運動機能のみならず、様々な生命現象をコントロールでき、高感度顕微鏡観察と組み合わせることで個体発生や分化誘導などへの応用が期待される。

當間頌子

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講演者 : 園部誠司先生 兵庫県立大学大学院生命理学研究科・准教授
講演タイトル : 「原生動物の運動」 

講演の前半は、アメーバ (Amoeba proteus) を対象にした研究について講演をして頂いた。まず、アメーバの破砕液から分離したミオシン分画と上清を混ぜ合わせることで、ミオシン分画がアメーバ様の動きをするゾルになることを in vitro で再現した。ゾルを電子顕微鏡で観察すると、ゾル表面はアクトミオシンの層で、内部はミオシンで形成されていた。また上清にはアクチンが多く含まれていた。このことから、アクチンを含む上清にミオシン分画を混合する事でアクトミオシンの層が形成され、次にアクトミオシンが収縮する事でゾル内部のミオシンを押し出し新たなアクトミオシンの層が形成される、この収縮と押し出しの繰り返しによってゾルがアメーバ様の動きをして、実際のアメーバの動きにも寄与するというモデルを立てた。次に、細胞表面と細胞質の動きを同時に蛍光観察した。その結果、アメーバは運動する際、細胞表面に形成したシワを利用する事が示唆された。また、位相差顕微鏡による細胞表面と細胞質の流動の観察を行った。すると、アメーバは細胞の中心に、流動するゾル層とそれを覆う流動しないゲル層があり、さらにゲル層と細胞膜の間には空間があることがわかった。以上の結果から、アメーバのゲル層・ゾル層が in vitro で再現したゾルのアクトミオシン層・ミオシンに対応し、それをシワのある細胞膜が覆ってアメーバを形作っているという仮説を立てた。
2つ目のトピックでは、イカダケイソウ (Bacillaria paradoxa) を題材にした研究について講演していただいた。イカダケイソウは複数の細胞の集合体で、細胞間でスライド運動をする。各細胞は重溝とよばれる溝で接しており、そこから分泌される粘液繊維でつながっている。スライド運動する際は、モータータンパク質であるミオシンが重溝根元のアクチン繊維上を滑走し、その動きが特定の膜タンパク質を介して粘液繊維に伝わると考えられている。イカダケイソウの粘液繊維に接着させたビーズを位相差顕微鏡により観察したところ、ビーズはそれぞれ重溝を独立に滑走した。このことから、イカダケイソウのスライド運動では重溝根元のアクチン繊維を複数のミオシンが独立に運動すると考えられた。
最後に、様々な面白い動きをする原生動物を紹介していただいた。これら原生動物の動きのメカニズムは明らかにされておらず、これからの研究進展が待たれる。
その後の懇親会では,活発な意見交換が行われ,大変有意義な研究交流会であった。

福村拓真


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