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生命機能研究科研究交流会(FBSコロキウム)101

講演者 Dr. Vladimir Kefalov ((Washington University in St. Louis・Associate Professor))
演題 「Calcium homeostasis in mammalian photoreceptors」
日時 2014年10月3日(金)16時00分〜17時00分
場所 生命機能研究科 ナノバイオロジー棟3階セミナー室
世話人 世話人:橘木修志(生命機能研究科 准教授)
Tel:(内)4613
E-mail:banaki@fbs.osaka-u.ac.jp












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実施報告

【Abstract】
Calcium (Ca2+) is a ubiquitous signaling molecule that controls the function and survival of neurons. The disrupted Ca2+ homeostasis in a wide range of photoreceptor mutations is believed to cause cell death, retinal degeneration and blindness. In vertebrate photoreceptors, Ca2+ changes also modulate the shutoff of the phototransduction cascade to accelerate light response recovery and background adaptation. It is thought that the concentration of Ca2+ in the outer segments of vertebrate photoreceptors is controlled by a dynamic balance between influx via the transduction channels and extrusion via cell-specific Na+/Ca2+, K+ exchangers (NCKX), NCKX1 in rods and NCKX2 in cones. However, the extent to which these exchangers control the Ca2+ homeostasis in mammalian photoreceptors and modulate phototransduction and cell survival has not been determined. In addition, it is not known whether other active or passive mechanisms for extruding Ca2+ are at play in the outer segments of mammalian rods and cones. We have generated NCKX1-deficient mice that have allowed us to establish the role of NCKX1 in regulating the Ca2+ homeostasis in mammalian rods and its effect on phototransduction and long-term rod survival and degeneration. Surprisingly, our results indicate the existence of additional, NCKX1-independent mechanism(s) for extruding Ca2+ from mammalian rods. We have also identified NCKX4 as a second Na+/Ca2+, K+ exchanger expressed in mammalian cones and have performed electrophysiological recordings from NCKX2- and NCKX4-deficient mouse cones. Our results demonstrate that the combined action of both NCKX2 and NCKX4 is required for the efficient extrusion of Ca2+ from mammalian cone photoreceptors critical for the fast response kinetics and background adaptation of cones as our daytime photoreceptors. Collectively, our results establish the molecular mechanisms that mediate the extrusion of Ca2+ from mammalian photoreceptors.

【レポート】

眼の中で光を受容している視細胞には桿体と錐体の2種類があり、それぞれ光に対して異なる応答特性を示す。この桿体と錐体には、それぞれ異なるカルシウム排出蛋白質(桿体はNCKX1、錐体はNCKX2)が発現していることが知られている。視細胞の応答特性の一部は細胞内カルシウム濃度の影響を受けるため、このカルシウム排出蛋白質の違いが、桿体と錐体の応答特性の違いを生み出す分子基盤の一つであることが予想される。本講演ではワシントン大学のVladimir Kefalov先生に、桿体と錐体それぞれのカルシウム排出蛋白質について機能解析を行った結果を、最新の未発表データを含めて紹介して頂いた。

Kefalov先生はまず、桿体のカルシウム排出蛋白質(NCKX1)の機能解析を行った結果を紹介された。解析は、NCKX1を欠損する変異マウスを作製し、その表現型を調べることによって行われていた。NCKX1欠損マウスは、明暗コントラスト検出能の低下、網膜の光に対する応答の時間分解能の低下、桿体の光に対する応答の強度の低下といった、視覚に関連する表現型を示すことが報告された。しかし一方、桿体の明順応に関しては野生型マウスとほとんど同じ能力を示すことが報告された。視細胞の明順応はカルシウムに大きく影響されることが知られている。従ってこの結果は、NCKX1非存在下でも、桿体に備わる他のカルシウム排出機構がその働きを担う事を示している。NCKX1は現在、桿体における唯一のカルシウム排出蛋白質と考えられているため、この結果は大変意外だった。またNCKX1欠損マウスでは、視細胞の電気的応答を司るcGMP依存性チャネルの発現量が低下することも報告された。この結果も、カルシウム排出蛋白質として知られるNCKX1が、他の蛋白質の発現調節という一見カルシウムと全く関連しない機能を示すという点で、とても意外な報告だった。

Kefalov先生は次に、錐体のカルシウム排出蛋白質の解析結果を紹介された。錐体では従来、カルシウム排出蛋白質としてNCKX2が発現している事が知られていた。しかし本講演ではNCKX2に加え、その相同蛋白質であるNCKX4が錐体に発現することが報告された。このNCKX4を欠損するマウスは、錐体の光に対する応答強度に関しては野生型マウスとほぼ同じ値を示したが、生じた応答の終息にかかる時間が長くなっていた。錐体は桿体と比べ、応答の終息にかかる時間が著しく短い事が知られている。従ってこの実験結果は、新たに錐体に発現する蛋白質として同定されたNCKX4が、錐体の光応答特性に寄与する蛋白質であることを示している。さらに、NCKX2とNCKX4のどちらか片方を欠損するマウスの錐体は光応答を示すが、NCKX4とNCKX2の両方を欠損するマウスの錐体は応答をほとんど示さない事が報告された。このことから錐体は、機能が重複する2種類の蛋白質、NCKX4とNCKX2を両方持つ事で、どちらか片方に異常が生じた場合でも光応答能が失われる事を防いでいると考えられる。

上記の報告に加えて、Kefalov先生はNCKX1欠損マウスの表現型がヒトの先天性夜盲症(CSNB)の症状に似ている、という知見も紹介された。医学部に所属する同氏が、基礎研究だけではなく、そこで得た知識の医学的な応用まで考えていることが印象的だった。

生命機能研究科
准教授
橘木 修志




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