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幹細胞・免疫発生研究室〈長澤教授〉

役職 氏名 Email TEL 研究・教育業績
教授 長澤 丘司 06-6879-4606 詳細を見る
准教授 杉山 立樹 06-6879-7968 詳細を見る
助教 尾松 芳樹 06-6879-7968 詳細を見る

本研究グループでは、すべての血液細胞を生涯供給し続ける造血幹細胞が、骨髄で維持され、増殖や分化が調節されるしくみを研究しています。

研究概要

生体の種々の組織では、多くの成熟細胞は寿命が短く毎日失われますが、少数ながら存在する組織幹細胞が新しい細胞を供給することで維持されています。組織幹細胞とは、組織の多様な成熟細胞を生み出し(多分化能)、何度でも分裂して自身を複製できる(自己複製能)能力を併せ持つ特別な細胞で、組織の維持の他、障害よりの再生をも担います。また、遺伝子の変異が蓄積し得るので、大部分のがんの発生母体ともなる重要な細胞です。組織幹細胞は、各組織で、ニッチ(niche)(用語解説1)と呼ばれる限局した特別な微小環境によって維持され、その細胞数や増殖・分化がコントロールされています。私たちは、骨髄(用語解説2)で、すべての血液細胞と免疫担当細胞を生み出す組織幹細胞である造血幹細胞のニッチを構成する細胞(CXCL12-abundant reticular cells; CAR細胞)を発見しました。CAR細胞自身は骨芽細胞や脂肪細胞を生み出す間葉系前駆細胞で、幹細胞や免疫担当細胞の産生を調節する機能分子の宝庫です。現在、(1)造血幹細胞ニッチが形成されるしくみ、(2)造血幹細胞や免疫担当細胞がニッチにより維持・調節されるしくみ、(3)白血病を含む血液・免疫・骨・代謝疾患の病因・病態への幹細胞ニッチの関与、について細胞・分子レベルで研究しています。

これらの研究は、免疫学・血液学・幹細胞生物学などの基礎医学・生命科学の他、血液細胞を造る人工ニッチを含む再生医療や、ニッチ療法を含む臨床医学とも密接に関連しています。

(1)幹細胞ニッチを構成する間葉系前駆細胞が形成されるしくみ

ケモカインファミリー(用語解説3)のサイトカインCXCL12(用語解説4)は、骨髄での造血幹細胞の維持と免疫担当細胞の産生に必須です。CAR細胞は、脂肪・骨芽細胞前駆細胞ですが、長い突起を持ち、CXCL12とSCF(用語解説5)を著しく高発現して、造血幹細胞や造血を維持するニッチを構成するというユニークな特性を持っています。全身に存在する脂肪・骨芽細胞前駆細胞の中で、骨髄でのみCAR細胞が、どのようにして生み出され、骨芽細胞や脂肪細胞への分化が調節されているのか? CAR細胞の形成機構を研究しています。

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(2)造血幹細胞や免疫担当細胞がニッチにより維持・調節されるしくみ

造血幹細胞は、胎児期に大動脈周囲(AGM)で発生し、肝臓(胎児肝)で活発に増殖した後、CXCL12によって骨髄に移動、定着(ホーミング)し、細胞周期が遅い状態で維持され、すべての血球を産生し続けます。骨髄でCAR細胞が、長い突起を用いて、どのようにして造血幹細胞を維持し、その細胞周期や各種血液細胞への分化を調節しているのか? 生体防御においては、どのようにして必要な免疫担当細胞を供給しているのか? を研究しています。

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(3)白血病を含む血液・免疫・骨・代謝疾患への造血幹細胞ニッチの関与

骨髄は、白血病や多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、がん転移、感染症、慢性炎症を含む、様々な難治性疾患の場となりますが、これまでは、血液細胞に注目した研究が行われてきました。造血幹細胞と造血を維持するニッチを構成するCAR細胞が同定されたことにより、これらの難治性疾患におけるCAR細胞の関与を解析し、ニッチを標的とする新しい視点から治療法の開発をめざしています。

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用語解説

  1. 幹細胞ニッチ
    幹細胞が接着し、幹細胞の維持に必須の限局した特別な微小環境。幹細胞の生存や増殖、未分化性の維持に必須のサイトカインやマトリクス分子が局在する。
  2. 骨髄
    骨の中心部には骨基質がなく空洞になっており、この空間を占める軟組織。全身の骨に存在し、ヒトで約3kgあり、最も大きな臓器のひとつ。酸素を運搬する赤血球、生体防御のためのリンパ球などの免疫系担当細胞を含むすべての血液細胞を生涯造り続けている。
  3. ケモカイン
    細胞の接着や運動を調節する活性が強いことで知られる構造が保存された(システイン残基の位置)小型(アミノ酸数が約100個)のサイトカインのファミリー。受容体は、7回膜貫通G蛋白質結合型(GPCR)。
  4. CXCL12(別名SDF-1,PBSF)
    造血幹細胞の骨髄へのホーミングと維持、B細胞を含む免疫担当細胞の産生に必須のサイトカイン。受容体はCXCR4で、胃腸管を栄養する動脈、心蔵を栄養する冠動脈の形成にも必須。
  5. SCF(stem cell factor)
    血液系では、造血幹細胞と赤血球前駆細胞の増殖に必須であるサイトカイン。受容体はc-kit。

参考(和文)

  • 長澤 丘司 "組織幹細胞のニッチとは" 実験医学Vol. 32 No. 16(10月号);2540-2542, 2014.
  • 長澤 丘司、尾松 芳樹、杉山 立樹 "造血幹細胞を維持する骨髄のニッチ" 実験医学Vol. 32 No.16(10月号);2543-2550, 2014.
  • 長澤 丘司 "労を惜しまず一隅を照らす" 若き研究者へ贈る言葉(日本臨床社),(2014)

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