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細胞の可動性を制御する亜鉛輸送体を世界で初めて発見 - 再生医療、癌の治療につながる大きな一歩

論文誌情報 Nature 429, 298-302 (2004)
著者 Yamashita, S.*, Miyagi, C.*, Fukada, T., Kagara, N., Che, Y.S. and Hirano, T. (* equally contributed)
論文タイトル Zinc transporter LIVI controls epithelial-mesenchymal transition in zebrafish gastrula organizer.
PubMed 15129296

図1:Zinc transporter LIV1の構造とその機能 LIV1は八回...

要旨

ゼブラフィシュ受精卵の初期発生における細胞運動制御機構を解析することにより、細胞の可動性獲得の鍵となる亜鉛要求性転写因子の活性を制御する因子を同定することに成功しました。この成果は、これまで謎とされてきた亜鉛輸送体による転写因子の活性制御機構を解明した世界で初となる研究成果です。今後細胞内亜鉛輸送機構を詳細に解析することによって、人間の体の形作りのメカニズムに迫るとともに、癌転移予防薬の確立につながるものと期待されます。

図1:Zinc transporter LIV1の構造とその機能

LIV1.gif LIV1は八回貫通型の膜蛋白で、細胞外から細胞内への亜鉛の輸送を担う。Zinc transporter LIV1は、体の形作りにおける上皮-間葉転換(EMT:epithelial-mesenchymal transition)のマスターレギュレーターであるZinc-finger transcription factor Snailの核移行を制御し、その結果細胞間接着分子の発現を低下させ細胞に可動性を獲得させる。創傷治癒、癌転移も同じメカニズムで制御されているようだ。

図2: LIV1/SnailによるEMT誘導に至る細胞内情報伝達系

EMTsignal.gif HGF, EGF, TGF-b, FGFなどの増殖因子は、EMTを引き起こすことが知られているが、その中でもHGFとEGFは、IL-6ファミリーサイトカイン同様、STAT3およびMAPKの活性化を引き起こす。活性化されたSTAT3はLIV1の発現を、一方MAPKはSnailの発現を転写レベルで制御する。LIV1はZinc依存的にSnailの核移行を制御し細胞にEMTを誘導する。またLIV1の発現はestrogenによっても制御されている。