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核膜孔複合体タンパク質による減数分裂期キネトコア構造形成の調節

論文誌情報 J Cell Biol 211, 295-308 (2015)
著者 楊惠如(1),淺川東彦(1),原口徳子(1,2),平岡泰(1,2)

  1. 大阪大学大学院生命機能研究科
  2. 情報通信研究機構未来ICT研究所
論文タイトル Nup132 modulates meiotic spindle attachment in fission yeast by regulating kinetochore assembly.
PubMed 26483559
研究室HP 細胞核ダイナミクス研究室〈平岡教授〉

解説

研究の背景
 減数分裂は生殖細胞の形成時に特異的な染色体分配様式であり、次世代へのゲノムの継承に必須です。減数分裂の特徴のひとつは2回の連続した染色体分配です。ヒトでいえば、精子や卵子のような生殖細胞が作られるときの細胞分裂がこれに該当します。第一分裂では、まず、父と母それぞれに由来する同種類の染色体同士(相同染色体)が2つに分離・分配され、続く第二分裂では姉妹染色体(複製によって2倍になった染色体)が2つに分離・分配されます。これまでに、第一分裂と第二分裂の分配様式の違いはセントロメア※1構造の違いによることがわかっていましたが、こうした構造的な違いを生む仕組みや因子については不明でした。今回、当研究科の平岡研究室(細胞核ダイナミクス研究室)は、分裂酵母を用いて、核膜孔複合体を構成するNup132タンパク質が、減数分裂期の特殊なセントロメア構造の形成に重要な働きをすることを明らかにしました。



研究の成果
 これまでの研究から、分裂酵母では、減数分裂前期にキネトコア※2の外層構造を構築するKMN複合体(図1)がセントロメアからいったん離れ、その後、第一分裂直前にセントロメアに再集合することが重要であるとわかっています。KMN複合体は、KNL1/Spc7がMis12複合体およびNdc80複合体と相互作用することによって形成される、非常に大きなタンパク質複合体です(図1)。研究チームは、核膜孔複合体を構成するタンパク質をそれぞれ欠失させた株を作成し、細胞内の染色体の挙動を観察しました。その結果、Nup132を欠失した細胞では、KMN複合体の再集合に異常があることがわかりました。欠失株では、Mis12およびSpc7が通常よりもずっと早い時期にセントロメアに集合したのです(図2)。さらにNup132欠失細胞では、減数第一分裂において、紡錘体形成チェックポイント機構※3が活性化されていました。これらのことから、Nup132が、減数第一分裂に必要な特殊なセントロメア構造の構築、および、スピンドルとキネトコアの正常な接着に重要な機能を果たすことが明らかになりました。
 今回の発見は、減数分裂期の染色体分配に核膜孔複合体が関与することを初めて示したものであり、正常な生殖細胞(卵子や精子など)が形成される仕組みの一端を明らかにしました。これにより、核膜がゲノムの保持のために果たす役割について理解が進むとともに、核膜構造の意義や有性生殖の仕組みについて新たな理解が深まる可能性があります。



用語解説

  1. セントロメア
    分裂期染色体に見られる狭窄部分の名称。この部分にキネトコアが形成され、紡錘体極から伸びた微小管が結合する。
  2. キネトコア
    分裂期染色体のセントロメア上に形成されるタンパク質を含んだ構造。ここに微小管が結合する。
  3. 紡錘体形成チェックポイント機構
    すべての染色体が双方向からの紡錘体微小管と結合するまで分裂期の進行を停止させておく細胞周期制御機構のこと。紡錘体やキネトコアの異常によってキネトコアと紡錘体微小管の結合に異常が生じると活性化する。紡錘体とは分裂期に2つの中心体から放射状に伸びた微小管によってできる細胞骨格。紡錘体微小管がキネトコアに付着して染色体を中心体方向へ引っ張ることで姉妹染色体が両極に分配される。

図1.キネトコアと微小管の接着

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図2.減数分裂におけるnup132欠失株の表現型

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