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細胞遊走を制御するAMPキナーゼ(AMPK)の新規基質を同定
- 動脈硬化進展抑制や癌転移抑制に期待 -

論文誌情報 Nat Commun 30, 6137 (2015)
著者 Yan Y. (1), Tsukamoto O. (1), Nakano A. (2), Kato H. (1), Kioka H. (3), Ito N. (3), Higo S. (3), Yamazaki S. (4), Shintani Y. (1), Matsuoka K. (3), Liao Y. (5), Asanuma H. (2), Asakura M. (2), Takafuji K. (6), Minamino T. (3), Asano Y. (3), Kitakaze M. (2), Takashima S. (7, 8)

  1. Department of Medical Biochemistry, Osaka University Graduate School of Medicine, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan
  2. Depertment of Clinical Research and Development, National Cerebral and Cardiovascular Center Research Institute, Suita, Osaka 565-8565, Japan
  3. Department of Cardiovascular Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan
  4. Department of Cell Biology, National Cerebral and Cardiovascular Center Research Institute, Suita, Osaka 565-8565, Japan
  5. Department of Cardiology, Nanfang Hospital, Southern Medical University, 1838 North Guangzhou Avenue, 510515 Guangzhou, China
  6. Center for Research Education, Osaka University Graduate School of Medicine, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan
  7. Department of Medical Biochemistry, Osaka University Graduate School of Medicine, 2-2 Yamadaoka, Suita, Osaka 565-0871, Japan
  8. Japan Science and Technology Agency-Core Research for Evolutional Science and Technology (CREST), Kawaguchi 332-0012, Japan
論文タイトル Augmented AMPK activity inhibits cell migration by phosphorylating the novel substrate Pdlim5.
PubMed 25635515
研究室HP 医化学研究室〈高島教授〉

解説

 高島成二教授らの研究グループは、AMPK賦活化によりリン酸化され細胞移動運動を抑制する蛋白質Pdlim5を同定し、AMPK活性化の抗動脈硬化作用・抗癌作用の機序の一端を解明しました。


研究の背景

 糖尿病による動脈硬化に伴う心血管合併症や癌は本邦における死亡原因の上位を占めますが、いずれも異常な細胞移動運動がその病態形成に関与します。興味深いことに、AMPK賦活作用を有する糖尿病治療薬は心血管イベントを抑制し、また、乳癌・子宮癌患者では術前化学療法の効果を高めることが臨床的に確認されています。一見、異なるように思われる抗動脈硬化作用と抗癌作用を結びつける分子機構として有力視されているのがAMPK賦活化による細胞移動運動の抑制です。血管平滑筋細胞や癌細胞を含む多様な細胞にて、AMPK賦活化による細胞移動運動の抑制効果に関する多数の報告がありますが、その機序については不明でした。


本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

  • 基礎的観点:AMPKのエネルギー代謝調節以外の新たな側面である細胞移動運動の調節機構が解明されました。
  • 臨床的観点:AMPK賦活化による抗動脈硬化効果や癌進展・転移抑制効果の解明と臨床応用が期待されます。

用語の説明
  1. AMPキナーゼ(AMPK):細胞のエネルギー状態を感知し、エネルギー枯渇状態で活性化される酵素で、糖質、脂質、蛋白質代謝に関連する酵素群をリン酸化して、機能を調節します。
  2. ラメリポディア:移動運動する細胞の前方周辺縁に形成される薄いアクチンフィラメントの網目構造。細胞の運動に重要な役割を持ちます。

図1.通常の状態(Normal condition)では、移動運動する細胞の前方周辺縁にてラメリポディア形成を促進する一連の蛋白質群(Rac1GEF, Rac1, Arp2/3)が活性化され、ラメリポディアが形成され細胞が移動運動します。  一方、AMPK活性が増強した状態(Augmented AMPK activity)ではAMPKによりPdlim5がリン酸化され、Pdlim5とRac1GEFとの結合が外れます。これにより細胞末梢での一連の蛋白質群の活性化が抑制され、ラメリポディア形成されず、細胞移動運動が抑制されます。

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