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染色体分配に関与する色素性乾皮症D群蛋白質新規複合体

論文誌情報 Mol Cell 39, 632-640 (2010)
著者 伊藤伸介(1,3),Li Jing Tan(1),安藤大輔(1),成田央(1),関峰秋(1),平野泰弘(2),成田圭子(1),倉岡功(1,3),平岡泰(2),田中亀代次(1)
  1. 大阪大学大学院生命機能研究科細胞機能学研究室
  2. 大阪大学大学院生命機能研究科細胞核ダイナミクス研究室
  3. 大阪大学大学院基礎工学研究科生体機能化学グループ
論文タイトル MMXD, a TFIIH-independent XPD-MMS19 protein complex involved in chromosome segregation
PubMed 20797633
研究室HP 細胞機能学研究室〈西條准教授〉

要旨

研究の背景

 ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair: NER)は、紫外線損傷を始め多様なDNA損傷を修復できる重要な遺伝情報維持機構である。NERは転写、複製、細胞周期等とも密接に関連し、複雑なネットワークを形成している。一方、NERに異常をもつヒト遺伝疾患として、日光露出部位での高頻度皮膚発がんや種々の精神神経症状を示す色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum: XP)、身体発育不全、精神神経症状や早期老化を示すコケイン症候群(Cockayne syndrome: CS)、 CS徴候に加えて毛髪脆弱性、皮膚角化を示す硫黄欠乏性毛髪発育異常症(trichothiodystrophy: TTD)などがある。また、NER異常を示すXPにはAからG群(XP-A〜XP-G)の7つ、CSにはAとB群(CS-AとCS-B)の2つの遺伝的相補性群が存在し、それぞれの原因遺伝子は既にクローニングされ、NERの分子機構が明らかになりつつある。XPやCSの病態はNER欠損が主因になっていると思われるが、それだけでは複雑なXP、CS、TTDの症状は説明できない。とりわけ、XPD遺伝子の異常により、XP、CS、TTDの3つの異なる疾患が発症する。このことは、XPDがNER以外にも多様な機能を持ち、その異常がXP、CS、TTDの病因になっている可能性が示唆される。そこで、XPDを蛋白質複合体として精製し、新規XPD複合体を同定し、MMXD複合体と命名した。それが染色体分配に関わること、XP-D患者細胞等ではその機能に異常があることを見つけ、MMXDの異常がXPやCSの病態の一因になっていることを示唆した。

研究の成果

(1)TFIIH非依存性の新規XPD複合体の精製
 XPDは基本転写因子TFIIHのサブユニットの一つであり、TFIIHは基本転写のみならずNERに必須の蛋白質複合体である。精製したXPD複合体にはTFIIHの他のサブユニットが認められたが、それ以外にMMS19、 MIP18、Ciao1、ANT2蛋白質が認められた。次いでMMS19と結合する蛋白質複合体を精製すると、XPDを含んでいたが、他のTFIIHサブユニットは認められなかった。以上の結果は、XPDはTFIIH非依存性に、MMS19、MIP18、Ciao1、ANT2と新規複合体を形成することを示唆し、これをMMXD(MMS19, MIP18, XPD)と名付けた。(図1)

(2)MMXD複合体は染色体分配に関与する
 MMXDの機能を解析する目的で、サブユニットの細胞内局在を調べたところ、細胞分裂期でチューブリンとの共局在が認められた。さらに、siRNAによってMMXDサブユニットをノックダウンすると、分裂期では紡錘体やクロモソームの異常が、分裂間期では異常な形態の細胞核が高頻度に認められた。以上の結果から、MMXD複合体は染色体分配に関わる機能を持つことが示唆された。(図2)

(3)XPD遺伝子に突然変異を持つXP-D、XP-D/CS患者細胞は染色体分配の異常を示す
 XPD遺伝子に突然変異を持ち、それぞれXP、XPとCSの合併、TTDを示すXP-D、XP-D/CS、XP-D/TTD患者細胞で染色体分配の異常の有無を調べたところ、XP-D、XP-D/CS細胞で染色体分配の異常が認められたが、XP-D/TTD細胞では異常は認められなかった。3者ともNERに異常を示すが、XP-D、XP-D/CS患者は皮膚がんを高頻度に発症するのに対し、XP-D/TTD患者では皮膚がんを発症しない。以上の結果はMMXDの異常による染色体分配の異常がXP-D、XP-D/CS患者の皮膚がん発症の一因になっていることを示唆する。(図3)

図1.XPDはTFIIH非依存性に、MMS19、MIP18、Ciao1、ANT2と新規複合体を形成する

 

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図2.MMXD複合体は染色体分配に関わる機能を持つ

 

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図3.MMXDの異常による染色体分配の異常がXP-D、XP-D/CS患者の皮膚がん発症の一因になっている

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