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核―細胞質間蛋白質輸送因子インポーティンα解析に基づく再生医学研究への新しいアプローチ

論文誌情報 Nat Cell Biol 9, 72-76 (2007)
著者 Noriko Yasuhara, Noriko Shibazaki, Shinya Tanaka, Masahiro Nagai, Yasunao Kamikawa, Souichi Oe, Munehiro Asally, Yusuke Kamachi, Hisato Kondoh and Yoshihiro Yoneda
論文タイトル Triggering neural differentiation of ES cells by subtype switching of importin-α.
PubMed 17159997

図1: インポーティンαサブタイプによる核蛋白質輸送と転写因子発現調節の相互依存...

要旨

我々は、哺乳類細胞の核―細胞質間蛋白質輸送を担う輸送因子インポーティンαサブタイプの発現パターンが、細胞分化に応じてスイッチすることを発見するとともに、そのスイッチングが細胞分化・未分化の運命決定に重要な役割を果たすことを明らかにした。

解説

インポーティンαという分子は、真核細胞における細胞質から核への蛋白質輸送に働く重要な因子として約10年前に発見され、哺乳動物細胞では、少なくとも5種類のサブタイプからなる遺伝子ファミリーを形成していることが知られている。今回、われわれは、マウスES細胞を用いた実験系で、ES細胞が神経細胞へと分化する際に、インポーティンαのサブタイプの発現がスイッチすることを発見するとともに、遺伝子操作を用いてES細胞におけるインポーティンαサブタイプの発現を適切にスイッチさせることにより、未分化ES細胞を神経細胞へと分化させることに世界で初めて成功した。これは、核―細胞質間分子輸送が「細胞分化」という高次生命現象に密接に関わっていることを具体的に証明した初めての例であり、この成果を利用することにより、再生医学研究の進展に対して、全く新しいアプローチを提供する可能性を秘めている。

図1: インポーティンαサブタイプによる核蛋白質輸送と転写因子発現調節の相互依存モデル

Yoneda2006-big.jpg 未分化ES細胞では、転写因子Oct3/4がインポーティンα1/βにより核内へと運ばれる。核内のOct3/4は自らの転写量を上げ、未分化維持に働く。インポーティンα1の発現抑制がきっかけとなって、Oct3/4の核内輸送量が減るとともに、発現量が減少する。その後、代わりにインポーティンα5が発現し始め、分化に関る転写因子を効率よく輸送することにより、分化誘導が進む。