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中心体関連タンパクODF2は2種類のアペンデージ構造のオーガナイザーとしてはたらく

論文誌情報 J Cell Biol 203, 417-425 (2013)
著者 立石和博(1),山崎裕自(1),西田倫希(2),渡辺慎(1),国本晃司(3),石川裕章(4),月田早智子(1)*

Kazuhiro Tateishi (1), Yuji Yamazaki (1), Tomoki Nishida (2), Shin Watanabe (1), Koshi Kunimoto (3), Hiroaki Ishikawa (4), Sachiko Tsukita (1)*

  1. Laboratory of Biological Science, Graduate School of Frontier Biosciences and Graduate School of Medicine, Osaka University, Osaka 565-0871, Japan
  2. Research Center for Ultra-high Voltage Electron Microscopy, Osaka University, Osaka 567-0047, Japan
  3. Department of Pathology, Stanford University School of Medicine, Stanford, CA 94305
  4. Department of Biochemistry and Biophysics, University of California, San Francisco, San Francisco, CA 94158

K. Tateishi and Y. Yamazaki contributed equally to this paper.
*: Corresponding author
論文タイトル Two appendages homologous between basal bodies and centrioles are formed using distinct Odf2 domains
PubMed 24189274
研究室HP 分子生体情報学研究室〈月田教授〉

解説

研究の概要

 繊毛(Cilia)は生体内のほぼすべての細胞に存在し、生物の発生及び生体恒常性維持に重要な役割を果たしていることが知られています。また、生体内に広く分布することから繊毛の異常は様々な症状につながることがわかっており、「繊毛病(Ciliopathy)」と呼ばれるこれらの疾患は臨床的にも非常に重要視されています。
 繊毛の根元には生物種や組織に例外なく基底小体(Basal body)と呼ばれる構造体が存在し、Distal Appendage(以下DA), Subdistal Appendage(以下SA)という2種類の突起構造が付随しています(図1)。これらの構造体は古くから知られ、繊毛の形成・維持に関わっていると考えられてきましたが、その詳細な機能は明らかになっていません。今回我々は、DA,SAの関連遺伝子であるOdf2の変異細胞を用いて解析を行い、DAは繊毛形成に必要不可欠であり、SAは細胞骨格の一種である微小管を安定な状態に保っているということを明らかにしました。



研究の成果

 当研究室における先行研究で、Odf2を欠失したOdf2ノックアウト(KO)細胞はDA, SAを作る事ができないことが分かりました(Ishikawa et al., Nat. Cell Biol. 2005)。本研究ではまず、Odf2 KO細胞に対してさまざまなOdf2変異遺伝子を再度導入することで、複数種のOdf2変異細胞を作製しました(図2)。こうして得られた複数種の細胞を解析したところ、一部の細胞(図2中”Ciliogenic constructs”)では繊毛形成が確認され、他の細胞では繊毛形成が見られませんでした。この結果より、Odf2遺伝子の配列のうち、繊毛形成に必須な部分を決定する事が出来ました。
 さらに、これらの細胞の基底小体の構造を透過型電子顕微鏡で観察したところ、DA, SAを欠失しているものが確認されました(図3)。更に、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターの超高圧電子顕微鏡を用いて、基底小体を三次元的に解析したところ、Odf2の遺伝子に応じて3種類の基底小体が現れ、繊毛形成にはDAの存在が必須であることがわかりました(図4)。この結果から、DAの機能は繊毛形成の制御であることがわかりました。
 次に、SAの機能を調べるため、基細胞骨格の一つである微小管(Microtubules)のうち、基底小体付近に分布しているものに注目しました。一般細胞において、基底小体及び中心体は微小管形成中心(Microtubules organizing center: MTOC)として機能し、その付近には多くの微小管が分布していることが知られています。先行研究から、基底小体を起点をとした微小管ネットワークの形成はOdf2の影響を受けないことがわかっていたため(Ishikawa et al., Nat. Cell Biol. 2005)、すでに形成された微小管ネットワークの安定性について検討を行いました。それぞれの細胞における微小管の安定性を解析したところ、SAを欠失した細胞は微小管の脱重合ストレスに対して強く反応することがわかりました(図5)。この結果から、SAの機能は基底小体周辺の微小管の安定化であることがわかりました。



今後の展開

 今回私達が作成した変異細胞は、DA,SAのそれぞれの機能や構造を個々に解析するツールとして役立ちます。こうしたアプローチを用いることによって、これまで知られていない繊毛や基底小体の新たな機能が見つかる可能性があります。また、こうした生物学的意義に加え、様々な繊毛病の原因究明及び治療方針の提案を通した、臨床的な発展への貢献も期待されます。

図1.繊毛基底小体とDistal Appendage, Subdistal Appendage
マウス気道上皮の走査型電子顕微鏡像(左)と、繊毛の根元にある基底小体の透過型電子顕微鏡像(中)及びその模式図(右)

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図2.Odf2遺伝子中の繊毛形成に必須な部位の特定
(A)実験に用いたOdf2変異遺伝子の配列(B)各変異細胞における基底小体の免疫蛍光染色像(C)各変異細胞の全体に占める繊毛形成細胞の割合

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図3.基底小体の構造変化
各変異細胞における基底小体の透過型電子顕微鏡像(上段、中段)及び、超高圧電子顕微鏡トモグラフィー像(下段)

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図4.超高圧電子顕微鏡による基底小体の3次元的解析
各変異細胞における基底小体の超高圧電子顕微鏡トモグラフィー像(各列は連続スライス)

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図5.Subdistal Appendageの機能解析
(A)微小管の安定性を検証した免疫蛍光染色像(上段はSA有り、下段はSA無しの細胞)(B)各変異細胞における微小管の安定性の比較(C)DA, SAそれぞれの機能を示した模式図

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