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信号の流れを交通整理する脳のαリズム

論文誌情報 J Neurosci 37, 5298-5308 (2017)
著者 高橋俊光(1,2),北澤茂(1,2,3)
  1. 大阪大学大学院生命機能研究科
  2. 大阪大学大学院医学系研究科
  3. 情報通信研究機関脳情報通信融合研究センター
論文タイトル Modulation of Illusory Reversal in Tactile Temporal Order by the Phase of Posterior α Rhythm
PubMed 28450538
研究室HP ダイナミックブレインネットワーク研究室〈北澤教授〉

本研究成果のポイント

  • 脳の電気活動の7割を占める10Hzのリズム(α波)が5個の成分に分かれることを発見
  • 楔前部に信号源を持つ最も強い成分の位相に応じて、右手と左手に加えた刺激の時間順序判断が逆転することを発見
  • α波が脳のネットワークの重要な交差点で信号の流れを交通整理していることを示唆

解説

頭皮上で記録できる脳の電気活動(いわゆる脳波)の7割は1秒間に10回のリズム活動(α波)が占めています。これほどメジャーな活動であるのに、その信号源や機能は十分に解明されていませんでした。本研究では、160個の磁場センサーで得られた脳の活動を独立成分分析と呼ばれる手法で解析した結果、10Hzのリズムが実は5個の独立した成分に分かれることを発見しました。最強の信号源は、脳の内側面の楔前部と呼ばれる脳のネットワークの要衝に位置していました(楔前部成分)。一方、手を交差させたときに右手と左手を100-200msの順序で触れると、信号の順序が逆転する錯覚が生じることが知られていました。この錯覚が起きる確率と5個の成分の強さや位相の関係を調べたところ、楔前部成分の位相によって逆転するかどうかが変化することがわかりました。つまり、α波の楔前部成分は、脳のネットワークの重要な交差点で信号の流れを交通整理していることが示唆されました。


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図.α波の楔前部成分が時間順序を変える
脳の内側面の楔前部に信号源がある10Hzのαリズムの「山」で信号が入力すると交差した手に加えた刺激の順序が「逆転」して知覚されやすい(赤)。「谷」で入力すると正解できる(青)。