おもろい研究!君ならできる、ここでできる|新しい生物学・生命科学を拓く大学院|大阪大学大学院生命機能研究科

English

DNA複製でのクロマチン構造変化をもたらすヒストンH4のアセチル化修飾を発見
- 生細胞イメージングによる直接計測と遺伝学的解析が奏功 -

論文誌情報 Sci Rep 5, 12720 (2015)
著者 阮琨(1),山本孝治(2),淺川東彦(1),近重裕次(2),木村 宏(3),升方久夫(4),原口徳子(1,2),平岡泰(1,2)

  1. 大阪大学大学院生命機能研究科
  2. 情報通信研究機構未来ICT研究所
  3. 東京工業大学大学院生命理工学研究科
  4. 大阪大学大学院理学研究科
論文タイトル Histone H4 acetylation required for chromatin decompaction during DNA replication
PubMed 26223950
研究室HP 細胞核ダイナミクス研究室〈平岡教授〉

解説

 これまでの細胞学的研究により、染色体の構造が細胞周期のS期で変化することはよく知られています。しかしながら、染色体構造変化をもたらす分子機構は解明されておらず、謎のままでした。染色体は生きた細胞の核に高度に折りたたまれて収納されており、構造の変化を正確に計測することが困難だったからです。このほど、当研究科平岡教授らの研究チームは、大学院生の阮琨さんが中心となって、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの減数分裂期の細胞核を用い、S期の染色体構造の変化の測定に成功し、その変化にはヒストンH4の特定部位のアセチル化が必要であることを発見しました。
 分裂酵母の減数分裂期の細胞核では、染色体がテロメアで束ねられ引っ張られて方向性の決まった線状の形態をとるため(図1)、クロマチンの凝縮の程度を容易に計測することができます。研究チームは、まず、染色体上の2点を蛍光タンパク質で標識してその距離を計測し、減数分裂期のDNA複製の間にクロマチンがゆるむことを明らかにしました(図2上)。さらに、このクロマチンのゆるみは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼMst1を減少させる、あるいはヒストンH4の8番目と12番目のリジン残基(K8、K12)を別のアミノ酸へ置換すると、抑えられることがわかりました。つまり、ヒストンH4のK8とK12のアセチル化がDNA複製の間クロマチンをゆるめるのに重要な役割を果たしていることが示唆されます(図2中・下)。
 クロマチン構造の調節は遺伝情報の本体である染色体の保持や次世代への継承に重要です。染色体の安定保持と継承の異常は、細胞の死やがん化につながります。したがって今回の研究成果は、S期におけるクロマチンの高次構造変化の解明に重要な知見であるばかりでなく、今後、がん治療などの医療分野に広く応用される可能性があります。

図1.分裂酵母の減数分裂期細胞核

...


図2.減数分裂期のDNA複製でおこるクロマチン構造変化

...