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生後環境による神経細胞間の同期的活動が神経回路を強化する

論文誌情報 Proc Natl Acad Sci USA 107, 7562-7567 (2010)
著者 山田成人(1),上阪直史(1),早野泰史(1),田端俊英(2),狩野方伸(2),山本亘彦(1)
  1. 大阪大学大学院生命機能研究科
  2. 東京大学大学院医学系研究科
論文タイトル Role of Pre- and Postsynaptic Activity in Thalamocortical Axon Branching
シナプス前後の神経活動が視床皮質軸索の枝分かれ形成に及ぼす役割
PubMed 20368417
研究室HP 細胞分子神経生物学研究室〈山本教授〉

要旨

 脳の発達期に神経回路が形成される最終局面において、神経細胞から伸長した軸索は枝分かれを形成し、多数の標的細胞と結合する。この軸索枝分かれ形成は、遺伝的(先的的)要因だけでなく神経活動による後天的メカニズムによって制御されることが知られているが、そのメカニズムについてはほとんど知られていなかった。

 私たちは、視床から大脳への投射系を電極付きの培養皿で再現し、視床軸索とその標的である大脳皮質細胞の発火活動が視床軸索の枝分かれ形成に及ぼす役割を解析した。培養2週間後、視床細胞と皮質細胞は共に活発な自発発火を示し、その状況下で視床軸索は多数の枝分かれを形成した。ところが、テトロドトキシン(フグ毒)存在下で発火活動をブロックすると、枝分かれはほとんど起こらなくなった。次に、カリウムチャネルの一つKir2.1の遺伝子を視床細胞だけに導入して活動を抑制したところ、視床軸索の枝分かれは顕著に減少した。Kir2.1を大脳側に導入して皮質細胞の活動を選択的に低下させた場合も、枝分かれ形成は著しく抑制された。

 以上の結果から、軸索の枝分かれ形成には、軸索側(シナプス前)と標的細胞側(シナプス後)の両方の神経活動が必要であることが明らかになった。すなわち、脳の発達期に神経細胞間の結合は、両者の神経活動が共に活発なときにだけ強化されることが示された。このことは、幼児期における神経活動の同期性が軸索末端の枝分かれの複雑さを調節し、脳の発達を制御することを示唆している。

図1 電極付培養皿で培養した視床(TH)と大脳皮質(CTX)。培養2週後、右図に示すような自発発火活動が観察され、視床から成長した軸索は皮質内で枝分かれ(緑線)を形成する。

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図2 軸索側(視床)と標的細胞側(大脳皮質ニューロン)の両方の活動が活発なとき、軸索の枝分かれ形成が促進される。

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