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プロトカドヘリンαファミリーは、セロトニン神経の標的脳領域における正確な神経支配に必須である

論文誌情報 J Neurosci 29, 9137-9147 (2009)
※COVER ILLUSTRATIONに選抜
著者 Shota Katori, Shun Hamada, Yukiko Noguchi, Emi Fukuda, Toshifumi Yamamoto, Hideko Yamamoto, Sonoko Hasegawa and Takeshi Yagi
論文タイトル Protocadherin-α family is required for serotonergic projections to appropriately innervate target brain areas.
PubMed 19625505
研究室HP 心生物学研究室〈八木教授〉

  図1 (A) 通常(WT)のマウスのProtocadherin-α...

要旨

プロトカドヘリンα(Pcdhα)ファミリーは、多様化膜タンパク質であり、それらの遺伝子はゲノム上でクラスターを形成している (図1A,WT,左)。Pcdhαファミリータンパク質は、可変領域エクソンに由来する多様な細胞外領域と常にスプライスングを受ける定常領域エクソンに由来する共通した細胞内領域を持つ(図1A,WT,右)。このPcdhαファミリーの生体内における機能を明らかにする目的で、Pcdhαファミリー欠損マウスの解析を行ってきた。その結果、現在までにPcdhαは嗅覚神経の軸索投射(Hasegawa et al., Mol Cell Neurosci. 2008)や、記憶・学習(Fukuda et al., Eur J Neurosci. 2008)において異常が明らかとなっている。本研究において、PcdhαとPcdhγの遺伝子発現を詳細に調べた結果、Pcdhαのみが縫線核(raphe nuclei)にあるセロトニン神経で強く発現していることが明らかになった(図1B)。セロトニンは、不安、摂食、概日リズム、うつ病などに関与し、脳幹の縫線核にあるセロトニン神経細胞から脳全体に軸索を広範に分岐させ神経支配を行っている。本研究では、このセロトニン神経について解析を行った。その結果、通常の成体マウスでは広範にほぼ均一に分布しているセロトニン神経軸索が、Pcdhαファミリー欠損マウス(図1A,ΔCR)では大きくが乱れており、特にセロトニン神経の投射の最終標的領域において大きな異常が認められた。この異常は、成体マウスの大脳皮質、海馬(図2)、視床(図3, P21)、線条体、嗅球など多くの脳領域で認められているが、生後早い時期では顕著な異常は見られなかった(図3, P7)。これらの結果より、Pcdhαファミリーは、セロトニン神経軸索の最終標的領域における広範で均一な神経支配に必須であることが明らかとなった(図4)。また、このメカニズムには、Pcdhαファミリーの共通した細胞内領域が関与していることも明らかとなった。

 

図1 (A) 通常(WT)のマウスのProtocadherin-α遺伝子クラスターは、14種類の第1エクソン(可変領域エクソン)と共通の第2〜4エクソン(定常領域エクソン)からなる。このため、Pcdhαファミリータンパク質は、多様化した細胞外領域と共通した細胞内領域をもつ。遺伝子改変技術により、Pcdhα遺伝子欠損マウス(ΔCR)を作製した。このマウスでは、Pcdhαの機能が失われていると考えられる。(B) Pcdhαの定常領域にプローブを設計し(A,波線)、in situハイブリダイゼーションを行ったところ、縫線核(Raphe nuclei)で強い発現が見られた。縫線核はセロトニン神経が集まった神経核である。



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図2 海馬、嗅内皮質、視床におけるPcdhα欠損マウス(PcdhaCR/CR)でのセロトニン神経の分布異常。セロトニン神経の軸索を抗セロトニントランスポーター抗体で染色した。成体のPcdhα欠損マウスでは、正常なマウスに比べ、嗅内皮質(Ent)の分子層と、海馬CA1の網状分子層において、セロトニン神経軸索が集積している。


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図3 視床におけるPcdhα欠損マウス(PcdhaCR/CR)でのセロトニン神経軸索の分布異常。セロトニン神経の軸索を抗セロトニントランスポーター抗体で染色した。外側膝状体(LG)、内側膝状体(MG)における生後7日(P7)、21日(P21)のセロトニン神経の分布。正常なマウス(WT)では、広範で均一なセロトニン神経の分布が、生後21日のPcdhα欠損マウスでは、神経核の周りに集中している。


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図4 Pcdhα欠損マウス(PcdhaCR/CR)でのセロトニン神経の分布異常のモデル図。セロトニン神経投射の中期段階までは、ほとんど異常が認められないが、最終段階において正常なマウス(WT)では、広範で均一なセロトニン神経の分布が終末分岐により起こるが、Pcdhα欠損マウスでは、神経核の周りに集中している。


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