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平面内細胞極性によるノード繊毛の回転軸方向の決定

論文誌情報 Nat Cell Biol 12, 170-176 (2010)
著者 Masakazu Hashimoto, Kyosuke Shinohara, Jianbo Wang, Shingo Ikeuchi, Satoko Yoshiba, Chikara Meno, Shigenori Nonaka, Shinji Takada, Kohei Hatta, Anthony Wynshaw-Boris and Hiroshi Hamada
論文タイトル Planar polarization of node cells determines the rotational axis of the node cilia
PubMed 20098415
研究室HP

要旨

研究の背景

 多くの脊椎動物の臓器は左右非対称に配置されています。マウスでは臓器の左右非対称性は、受精後7日目の胎児におけるノードと呼ばれる組織における液流によって決定されています。ノードには数百本の繊毛が生えており、それらが時計回りに高速に回転することによって左向き一方向の液流(ノード流)を生み出しています。これまでに、ノード流が左向き一方向になるためには、繊毛の回転軸方向は胚後方へ傾いていることが重要であることが示唆されていましたが、そのメカニズムは明らかにされていませんでした。

研究の成果

 ノードのライブイメージングや定量的なアッセイによって、ノード繊毛の根元に位置する基底小体は発生が進むに従って、細胞の中央から後方へ徐々に移動することが明らかになりました。次に基底小体位置の後方への移動およびノード流の方向性は、平面内細胞極性因子の一つであるDishevelledのノックアウトマウスで失われることがわかりました。さらにノードにおいてWnt古典的経路の活性が完全に失われるWnt3a変異胚では基底小体位置は正常だったのに対して、Wnt非古典的経路で働くとされるRac1を阻害した場合、基底小体位置は後方へ移動しないことを見いだしました。また、Dvl2およびDvl3蛋白質はノード細胞のアピカル膜の後方に強く局在しており、これは基底小体位置が後方へ移動する前から観察されました。これらの結果は、ノード繊毛の回転軸を後方へ傾かせるための基底小体位置の後方への移動は、非古典的Wnt経路である平面内細胞極性によって制御されていることを示唆しています。
また、本研究では、マウスの個体発生において、ノードで前後の軸情報(Dvl蛋白質の局在)が、左右の軸情報(ノード流の方向性)へと変換されることを示しました。

今後の展望

 今回の成果により、Dvlの後方への局在が回転軸方向制御に重要であることがわかりました。ではなぜDvl蛋白質は後方へ偏った局在を示すのでしょうか?今回明らかになったイベントのさらに上流を調べることで、体軸形成のメカニズムをより深く追求していきます。

図1.基底小体位置の変化

繊毛の根元にあたる基底小体(緑)はノードが形成されて間もないEarly Bud stageでは中央に位置するが(左)、発生が進むと細胞の後側に位置する(右)

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図2.Dishevelledノックアウトマウスのノード流

ノードに蛍光ビーズを入れ、ビデオレートで観察し、その動きをベクトル表示させている。Controlマウス(左)では強い左向き一方向の流れが観察されたが、Dvlノックアウトマウス(右)では、基底小体が胚後方へ移動せず、繊毛の回転軸が傾かないため、ノード流の左向きの一方向性が失われ、渦巻き状になる。

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図3.Dishevelled蛋白質の局在

平面内細胞極性因子のひとつであるDishevelled(左図緑)がノード細胞の後ろ側に強く局在している。この前後極性が基底小体を後方へ動かし、繊毛の回転軸方向を後方へ傾け、ノード流を左向き一方向にしている。

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