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PGC7/Stellaは、初期胚発生過程においてDNAを脱メチル化から保護する

論文誌情報 Nat Cell Biol 9, 64-71 (2007)
著者 Toshinobu Nakamura, Yoshikazu Arai, Hiroki Umehara, Masaaki Masuhara, Tohru Kimura, Hisaaki Taniguchi, Toshihiro Sekimoto, Masahito Ikawa, Yoshihiro Yoneda, Masaru Okabe, Satoshi Tanaka, Kunio Shiota, and Toru Nakano
論文タイトル PGC7/Stella protects against DNA demethylation in early embryogenesis.
PubMed 17143267
研究室HP 病因解析学研究室〈仲野教授〉

図1:PGC7/Stellaによる雌性ゲノムの脱メチル化からの回避 PGC7/S...

要旨

我々は、母性効果遺伝子であるPGC7/Stellaが、受精後速やかに核移行し、雌性ゲノムを能動的脱メチル化から保護することを見出すとともに、初期発生においてインプリンティングの維持にも重要な役割を果たすことを明らかにした。

解説

哺乳類の初期発生は、精子と卵子に由来するクロマチンのエピジェネティックな情報を、初期胚型に書き換えることによって開始される。精子由来の雄性ゲノムは受精後まもなくDNA複製を伴わない能動的脱メチル化を受けるのに対して、母親由来の雌性ゲノムはこの脱メチル化から保護され、しばらくの間メチル化が維持される。この雌雄ゲノムの不均等性は、epigenetic asymmetryと呼ばれ、正常な発生に必須であると考えられている。今回われわれは、PGC7/Stella遺伝子欠損の受精卵において、雄性ゲノムだけではなく雌性ゲノムにおいても能動的脱メチル化が生じること、すなわち、PGC7/Stellaは雌性ゲノムを受精後の能動的脱メチル化から保護する機能を有することを見出した。また、PGC7/Stella遺伝子欠損の受精卵では、一部のインプリント遺伝子にも脱メチル化が認められることから、初期発生においてインプリンティングの維持にも重要な役割を果たすことが明らかとなった。これらの成果は、正常発生におけるエピジェネティック制御の解明だけでなく、体細胞核リプログラミングの分子機構の解明へもつながる可能性を秘めている。

図1:PGC7/Stellaによる雌性ゲノムの脱メチル化からの回避

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PGC7/Stella遺伝子欠損卵を、抗メチル化シトシン抗体(5MeC)とDAPIを用いて二重染色を行った。未受精卵では、PGC7/Stella 遺伝子欠損卵においてもコントロールと同程度のメチル化が認められたが(左図)、受精卵では、PGC7/Stella遺伝子欠損卵において、雌性ゲノムに おいても雄性ゲノムと同程度の脱メチル化が認められた(右図)。(m: 雌性前核、p: 雄性前核)。

図2:受精卵におけるPGC7/Stellaとゲノムメチル化の関係

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PGC7/Stella遺伝子欠損卵では、受精後に、雌性ゲノムが雄性ゲノムの脱メチル化と同じタイミングで生じるため、epigenetic asymmetryを獲得できない。また、PGC7/Stella遺伝子欠損卵では、一部のインプリント遺伝子のメチル化が維持できない。