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炎症、がん化に関わる新たなNF-κB活性化機構の発見

論文誌情報 Nat Cell Biol 11, 123-132 (2009)
著者 Tokunaga, F., Sakata, S.-I., Saeki, Y., Satomi, Y., Kirisako, T., Kamei, K., Nakagawa, T., Kato, M., Murata, S., Yamaoka, S., Yamamoto, M., Akira, S., Takao, T., Tanaka, K. and Iwai, K.
論文タイトル Involvement of linear polyubiquitylation of NEMO in NF-κB activation
PubMed 19136968

要旨

NF-κBは種々の刺激によって活性化される転写因子であり、免疫応答、炎症、細胞接着の誘導、抗アポトーシス作用などの多彩な生理作用を発揮する。さらに、その活性調節異常がアレルギー、ガンを含め幾多の疾患に関与していることが知られており、創薬のターゲットとして多くの研究者が研究を進めている転写調節因子である。
  ユビキチン修飾系はタンパク質が出来上がった後に、ユビキチンが複数個数珠状に繋がって形成されるポリユビキチン鎖を結合させることで、多様な様式タンパク質の機能を制御する翻訳後修飾系であり、ポリユビキチン鎖の種類によってタンパク質の制御のされ方が異なっていると考えられている。従来知られていたポリユビキチン鎖は全て分岐鎖状であるのに対し、我々はHOIL-1LとHOIPからなるLUBACユビキチンリガーゼ複合体が直鎖状ポリユビキチン鎖と呼ばれる新しいポリユビキチン鎖を選択的に生成する報告し、その役割の研究を進めていた。
  その結果、細胞が炎症性サイトカインなどで刺激を受けたあと、LUBACはNEMOと呼ばれるNF-κBの活性化に非常に重要な役割を果たすタンパク質と選択的に結合して、NEMO に直鎖状ポリユビキチンを付加することでNF-κBの活性化に導くことを明らかにした(図)。さらに、直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ複合体の構成成分の1つであるHOIL-1Lを欠損しているマウス由来の肝細胞ではTNF-α依存的なNF-κBの活性化が著しく減弱することを示した。これまでにも、ポリユビキチン化は多彩な様式でNF-κBの活性化に関与することが知られてはいたが、そのいずれもがNF-κB選択的ではないのに対し、直鎖状ポリユビキチン鎖はNF-κBを特異的に活性化すると思われる。
  NF-κBはリウマチなどの免疫異常を伴う疾患、アレルギー、ガンなどの多彩な疾患に関わっている。さらに、直鎖状ポリユビキチン化はこれまでのところ他の刺激伝達系には影響を及ぼさず、NF-κBを特異的に制御している。それゆえ、直鎖状ポリユビキチン化はNF-κBの活性を調節する薬剤の良いターゲットになることが期待される。

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細胞がTNF-αやIL-1β等の炎症性サイトカインで刺激されるとHOIL-1L/HOIPユビキチンリガーゼ複合体がNEMOと結合して、NEMOに直鎖状ポリユビキチン鎖を付加する。NEMOが直鎖状ポリユビキチン化されるとIKK複合体内のIKKβがリン酸化されることで活性化され、NF-κBと結合しているIκBαをリン酸化する。リン酸化されたIκBαは速やかに分解され、IκBαから遊離したNF-κB (この図ではp65/p50複合体)が核に移行してDNAと結合して、種々の遺伝子の転写を亢進させる。