おもろい研究!君ならできる、ここでできる|新しい生物学・生命科学を拓く大学院|大阪大学大学院生命機能研究科

English

セントロメアタンパク質の細胞周期におけるダイナミックな構成変化

論文誌情報 Mol Biol Cell 26, 3768-3776 (2015)
著者 Harsh Nagpal(1,2),堀哲也(1),古川亜矢子(3),菅瀬謙治(3),越阪部晃永(4),胡桃坂仁志(4),深川竜郎(1,2)

  1. 大阪大学大学院生命機能研究科
  2. 国立遺伝学研究所 分子遺伝研究部門
  3. サントリー生物有機科学研究所
  4. 早稲田大学理工学術院先進理工学部
論文タイトル Dynamic changes in the CCAN organization through CENP-C during cell-cycle progression
PubMed 26354420
研究室HP 染色体生物学研究室〈深川教授〉

図1.細胞周期の進行とセントロメアの模式図。紡錘体微小管の結合する染色体領域をセ...

解説

細胞分裂時に起こる染色体分配の根幹をなすセントロメアの構造変化に関わる重要な分子機構が、当研究科染色体生物学研究室の深川教授らによって明らかになりました。この成果は、Molecular Biology of the Cell(9月9日付けオンライン版)に掲載されました。


研究の背景

 生物の生命が維持されるためは、個々の細胞が正確に分裂しなければなりません。その際に、すべての遺伝情報も完全にコピーされて分裂する娘細胞へ遺伝情報を正確に伝達する必要があります。生物の全遺伝情報は染色体に包括されているので、この遺伝情報の伝達過程を染色体分配とよんでいます。
 染色体の分配は、細胞の両極から伸びた紡錘体微小管が染色体の特殊構造をとらえることによって、遂行されます (図1)。微小管が結合する染色体の特殊領域はセントロメアとよばれており、セントロメアと微小管が正確に結合しないと、染色体の間違った分配が生じてしまいます。この間違った染色体分配は、細胞にとって悪影響を及ぼすため、セントロメアがどのように構成され、どのように紡錘体微小管と結合するのかについての分子機構の解明は、極めて重要な研究です。


今回の研究の成果

 これまでの研究で深川教授らは、セントロメアを構成するタンパク質を20種類程度同定し、機能を解析してきました。なかでも注目しているのは、タンパク質どうしがどのように結合して正確なセントロメア構造を構築してゆくのかという点です。今回の研究では、CENP-Cというタンパク質がその結合パートナーを細胞周期で変化させ、セントロメア構造の変化に寄与していることを明らかにしました。
 CENP-Cは、細胞周期を通じてセントロメアに存在していますが、どのようなパートナーと結合してセントロメア構造の構築に関与しているかは、よくわかっていませんでした。今回、研究チームは、CENP-CのニワトリノックアウトDT40細胞へニワトリCENP-Cの各種変異体を導入し、その局在を解析するとともに、生化学的な実験によって、結合パートナーの同定を試みました。
 実験の結果、CENP-Cは、間期核内では166−324アミノ酸の領域が別のセントロメアタンパク質のCENP-L-Nと結合することで、細胞分裂期においてはC末端の601−864アミノ酸の領域がCENP-Aヌクレオソームに直接結合することで、セントロメアに局在することが明らかになりました。これまでの研究から、間期核内では、CENP-LがCENP-Aヌクレオソームと結合することが分かっています。このことと今回の結果より、CENP-Cは、間期核内ではCENP-Aと結合したCENP-L/Nを介してセントロメアに局在する一方で、細胞分裂期ではCENP-Aと直接結合してセントロメアに局在することが示唆されました(図2)。このようなダイナミックな構造変換は、セントロメア構成を理解するうえで極めて重要であり、それを分子レベルで初めて明らかにした今回の成果は、セントロメア構成の研究に新しい方向性を与える重要な成果であると考えられます。「今後は、どのような分子機構によって、この構造変換が生じるのかを明らかにしたいと考えています」と、深川教授は語っています。

図1.細胞周期の進行とセントロメアの模式図。紡錘体微小管の結合する染色体領域をセントロメアとよぶ。

...


図2.間期と細胞分裂期でのセントロメア構成の違い。

...