おもろい研究!君ならできる、ここでできる|新しい生物学・生命科学を拓く大学院|大阪大学大学院生命機能研究科

English

MHC class II依存性自己免疫疾患の発症のための4ステップモデル

論文誌情報 J Exp Med 208, 103-14 (2011)
著者 村上正晃(1*),奥山祐子(1*),小椋英樹(1*),浅野省吾(1),有馬康伸(1),鶴岡峰子(1),原田誠也(1),金本䔈(1),澤幸久(1),岩倉洋一郎(3),高津聖志(4,5),上村大輔(1)、平野俊夫(1,2)
  1. 大阪大学大学院生命機能研究科、医学系研究科、免疫フロンティア研究センター、JST-CREST、免疫発生学研究室
  2. 理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター サイトカイン制御研究グループ
  3. 富山大学大学院医学薬学研究部 免疫バイオ・創薬探索研究講座
  4. 富山県薬事研究所
  5. 東京大学医科学研究所システム疾患モデル研究センター、JST-CREST、分子病態研究分野
論文タイトル Local microbleeding facilitates IL-6– and IL-17–dependent arthritis in the absence of tissue antigen recognition by activated T cells
PubMed 21220456

要旨

研究の背景

自己免疫疾患とは、本来自分の体を病原体から守るべき免疫系が、自分自身の組織、臓器を攻撃して“難治性の慢性的な炎症”を誘導する病気である.多くの自己免疫疾患では、炎症が誘導される標的臓器は限られている。例えば、関節リウマチでは、関節への炎症反応がその病態を誘導する。これまで、各自己免疫疾患ごとの標的臓器の特異性の理由は以下のように考えられてきた:『本来正常な免疫系が持つ自己抗原に対するトレランスの破壊が原因』。この考え方は、ほとんどの自己免疫疾患が、遺伝学的にCD4+T細胞が抗原を認識するために必須な“MHCクラス2”遺伝子にリンクすることからも支持されてきた。しかし、ほとんどの自己免疫疾患では、免疫系が攻撃している“臓器の特異抗原”は特定されていない。

研究の成果

今回、なぜ、このような特異抗原が単離できないのかを説明するモデルを示した。IL-6依存性のリウマチモデル、F759マウスの関節炎はMHCクラス2とCD4+T細胞に依存するが、CD4+T細胞の抗原認識には依存しなかった。その発症機序を検討した所、(1)CD4+T細胞の活性化に伴うサイトカイン発現、(2)活性化CD4+T細胞の標的臓器への集積、(3)標的臓器での一過性のIL-6アンプ(間葉系細胞でのIL-17とIL-6刺激によるIL-6やケモカイン等の相乗的発現)の活性化(4)標的臓器のT細胞由来サイトカイン感受性の亢進の4つのステップが重要である事を示した。この4つのステップの結果として、 IL-6アンプの標的臓器における“慢性的”活性化亢進が起こり、大量のIL-6やケモカイン等が局所で発現されて臓器特異的な慢性炎症に発展する。さらに、実験的脳脊髄炎の実験結果と合わせて考えると“CD4+T細胞の活性化”はサイトカインのソースとして重要であるが、この活性化は必ずしも標的臓器抗原に特異的である必要は無い。さらに、“活性化CD4+T細胞の標的臓器への集積”は、必ずしも標的臓器抗原に依存している必要は無く、標的臓器局所での感染、外傷や異物、あるいは微小出血などの“局所の事象/ Local events”によって誘導される。

今後の展開

IL-6アンプの慢性的活性化亢進機構をより詳細に検討することで、難治性の慢性炎症を主調とする様々な疾患の治療起点が生まれる可能性が高いと考えて日夜研究を続けている。

図1.
F759関節炎はMHCクラス2およびCD4+T細胞に依存するが、CD4+T細胞の抗原認識には依存しなかった。F759関節炎の発症を詳細に検討した所、(1)CD4+T細胞の活性化に伴うサイトカイン発現、(2)活性化CD4+T細胞の標的臓器への集積、(3)標的臓器でのIL-6の過剰発現(4)標的臓器のT細胞由来サイトカイン感受性の亢進の4つのステップが、結果的に"IL-6アンプの標的臓器における慢性的活性化"を誘導して、大量のIL-6やケモカイン等が局所で発現されて臓器特異的な慢性炎症に発展することが判明した。さらに、実験的脳脊髄炎(EAE)の実験結果と合わせて考えると"CD4+T細胞の活性化"はサイトカインのソースとして重要であるが、この活性化は必ずしも標的臓器抗原に特異的である必要は無いこと、"活性化CD4+T細胞の標的臓器への集積"は、必ずしも標的臓器抗原に依存している必要は無く、標的臓器局所での感染、外傷や異物、あるいは微小出血などの"局所の事象"Local eventsによって誘導されることが推定される。


hirano-20110120-jpn.jpg