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転写不活発な染色体末端(テロメア)が予想外にゆるんでいることを発見
- 超分解能顕微鏡による観察で従来の常識を覆す -

論文誌情報 Nat Commun 6, 7753 (2015)
著者 松田厚志(1,2),近重裕次(2),丁大橋(2),大槻千鶴(1),森知栄(2),淺川東彦(1),木村宏(3),原口徳子(1,2),平岡泰(1,2)

  1. 大阪大学大学院生命機能研究科
  2. 情報通信研究機構未来ICT研究所
  3. 東京工業大学大学院生命理工学研究科
論文タイトル Highly condensed chromatins are formed adjacent to subtelomeric and decondensed silent chromatin in fission yeast
PubMed 26205977
研究室HP 細胞核ダイナミクス研究室〈平岡教授〉

解説

 DNAは、細胞内では、クロマチンと呼ばれる構造(ヒストンと呼ばれるタンパク質や、RNA、多数のタンパク質との複合体)を作って働いています。さらに、ヒストンの翻訳後修飾が、DNAの正常な構造の維持および機能に重要であると考えられています。しかし、これまでは、細胞内で遺伝情報が読み出される際のクロマチン構造の変化を高感度に検出する技術はがなく、詳細は不明でした。
 このほど、当研究科細胞核ダイナミクス研究室の平岡教授らは、国立研究開発法人情報通信研究機構の原口招聘教授らと共同で、超分解能観察ができる特殊なイメージング技術3DSIMを用いて、染色体の特定領域が光るように仕掛けを施した分裂酵母を観察しました。その結果、予想外のことが明らかになりました。
 これまで、分裂酵母の染色体末端であるテロメア周辺はDNAが読まれていないので、凝集したクロマチン領域と考えられてきました。しかしながら今回、超分解能で観察した結果、テロメアは緩んだクロマチン構造を持ち、高度に凝縮した領域は、従来考えられていたテロメアではなく、それに隣接する領域であることがわかりました。この領域では、クロマチンが高度に凝集しているにもかかわらず、DNAが読まれていることが判明しました。従来の顕微鏡の分解能では見分けることができなかったテロメア領域と隣接する凝縮領域が、今回の超分解能観察により、初めて識別が可能になったのです。さらに研究グループは、高度に凝集した染色体領域を作るためには、ヒストンの翻訳後修飾が必要なことも明らかにしました。
 本研究では、2014年のノーベル化学賞を受賞した高分解能顕微鏡を用い、新しい生物学的知見を得ることができました。これらの発見は、今後、遺伝子治療や再生医療分野などに貢献するものと期待されます。

図1.分裂酵母の細胞核の画像。左は従来法で観察した画像、右は超分解能で観察した画像。白い部分が染色体DNA

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