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claudin類似4回膜貫通タンパク質-IP39は 4種の分子間相互作用様式を用いて、膜平面内でTJ-strand様の線状重合を構築する。

論文誌情報 Nat Commun 4, 1766 (2013)
著者 鈴木 博視(1,*),伊藤 泰行(2,3,*),山崎 裕自(2),峯田 克彦(4),氏 昌未(2),阿部 一啓(1),谷 一寿(1),藤吉 好則(1),月田 早智子(2)

Hiroshi Suzuki (1, *), Yasuyuki Ito (2, 3, *), Yuji Yamazaki (2), Katsuhiko Mineta (4), Masami Uji (2), Kazuhiro Abe (1), Kazutoshi Tani (1), Yoshinori Fujiyoshi (1) & Sachiko Tsukita (2)

  1. Cellular and Structural Physiology Institute (CeSPI), Nagoya University, Nagoya 464-8601, Japan.
  2. Laboratory of Biological Science, Graduate School of Frontier Biosciences and Graduate School of Medicine, Osaka University, Suita 565-0871, Japan.
  3. Research Fellow of the Japan Society for the Promotion of Science.
  4. Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, Kita, Sapporo, Hokkaido 060-0814, Japan.

*These authors contributed equally to this work.
論文タイトル The four-transmembrane protein IP39 of Euglena forms strands by a trimeric unit repeat
PubMed 23612307
研究室HP 分子生体情報学研究室〈月田教授〉

図1.TJでは4回膜貫通タンパク質Claudinが線状(strand)に、かつ網...

解説

 Tight junctions(TJs)の主要な構成分子であるclaudinは現在27種類のメンバーが確認されており、細胞間接着部位において膜平面内で重合(cis型重合によるstrandを形成)し、隣接細胞間で接着(trans型重合)することで上皮細胞間バリアを構築する。細胞間バリアの真の理解のためにはclaudinの立体構造情報に基づいたstrand状の重合原理の議論が重要であるが、今日まで明らかになっていない。近年、Euglena gracilis(ミドリムシ)にclaudin類似の膜タンパク質IP39の発現が報告された。このIP39は線状に重合し、さらに天然性に結晶性を持つことが明らかになった。そこで我々はこのIP39の構造解析を行う事でclaudinの重合原理解明に重要な情報が得られると考え、京都大学(現・名古屋大学細胞生理学研究センター長)の藤吉研究室との共同研究を行い、2次元結晶構造解析法によって分解能10Åの立体構造を得た。このIP39は最小単位に3量体を最小単位とし、この3量体内で1分子が他の2分子に対して、脂質膜に水平方向に180度向きを変えて配向していることを明らかにした(IP39が非対称性にオリゴマーを形成する)。この3量体が長軸方向に重合し、さらに2本の重合鎖が結合することで1本のstrand(線状の重合鎖)を形成する。ここにはIP39単分子同士で4種の分子間相互作用様式が存在することになる。このmultiple-interactionによりstrandが弧を描くのを防ぎ、strandの向きを補正することで、claudin様な線状の重合化を実現していると考えられる(distortion-reset model)。



背景と内容

Claudinによるstrand形成原理の解明

【claudinは如何にしてstrandを形成するのか?】

Tight junctions(TJs)の主要な構造分子であるclaudinは細胞間接着部位において膜平面内で線状に重合(cis型のstrand形成)して上皮細胞間バリアを構築している。claudinはヒトやマウスでは現在27種類のsubtypeが確認されており、subtype特異的な細胞間バリア機能やstrandの形態が存在することが知られている。また、TJ strandが欠失すると細胞間バリア機能が消失することも報告されている事より、TJ strand形成が上皮細胞バリア機能の獲得には必須であると考えられる。しかし、TJ strand形成つまりclaudinの重合原理の理解にはclaudinの立体構造を明らかにする必要がある。しかしclaudinの構造解析はclaudinが膜タンパク質である事や網目状に重合する複雑な分子間相互作用を持つ分子であることが、構造解析をする上で非常に困難でありその解析は進んでいない。
近年、単細胞生物であるEuglena gracilis(ミドリムシ)にclaudin類似の膜タンパク質IP39の発現が報告された。さらにIP39は細胞膜上で線状に重合し、さらにその配向は天然性に結晶性を示すことから構造解析を行う事が可能である。IP39の立体構造情報を得ることが出来れば、それはclaudinが如何にしてstrandを構築するのか、その重合様式を分子レベルで説明できる可能性が存在すると考えた。

 そこで、我々は当時京都大学の藤吉好則教授(現・名古屋大学)の研究室との共同研究により、IP39の構造を10Åの分解能で示した。

 IP39の2次元結晶内は、最小単位に3量体を形成する。この3量体が長軸方向へと繰り返し重合することで重合鎖を形成し、2本の重合鎖が隣同士に並んで互いに結合することで1本のstrandを構築することを示した。この3量体は1分子が他の2分子に対して、脂質膜に水平方向に180度向きを変えて配向していた(IP39が非対称性にオリゴマーを形成する)。この3量体が長軸方向に重合し、さらに2本の重合鎖が結合することで1本のstrand(線状の重合鎖)を形成していることが分かった。この構造にはIP39単分子同士で4種の分子間相互作用様式が存在することが確認できた。

 このIP39のmultiple-interactionが示す役割とは?

 膜タンパク質が脂質膜の様な2次元平面内で相互作用することで重合鎖を作る際、その結合による歪みから、重合は直線状ではなく湾曲することで、次第にはリング状の分子鎖が構成される。しかし、IP39は4つの分子間相互作用を持つことで湾曲することを抑制し、直線状の重合鎖形成を可能としていると考えられる。2次元結晶化されたIP39の構造は、細胞骨格タンパク質の存在無しにIP39単独で直線状に重合出来ることを意味しており、分子量29kDaの小さな4回膜貫通タンパク質がこの様な平面内配向を見せる例は過去に例が無く、構造学的にも非常に興味深い点である。



今後の展開

 本研究で我々は分子量29kDaの小さな4回膜貫通タンパク質がこの様な脂質平面内におけるTJ-strand形成原理のモデルの1つを構造学的に提示した。将来的にclaudinの構造が解明される時、本研究はclaudinの機能および構造解析において重要な知見、テンプレートとなると思われる。さらに組織特異的に発現しているclaudinのバリア機能の解析に繋がり、claudinとの関連が報告されている疾患においても、新規治療薬の設計に大きな知見に繋がる可能性があると考えている。

図1.TJでは4回膜貫通タンパク質Claudinが線状(strand)に、かつ網目状に重合する。

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図2.Euglenaの細胞膜では主要膜タンパク質IP39が天然性に結晶性を持って配列する

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図3,図4.Euglena-IP39とhuman-claudin-1の予測二次構造

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図5.IP39は結晶内で最小単位に3量体を形成する

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図6.IP39は3量体内で非対称的な配向を形成する

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図7.IP39は4通りの分子間相互作用を用いて3量体の反復構造を構築する

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図8.IP39は4通りの分子間相互作用を用いてTJ-strand様な線状重合を可能にする

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