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IQGAP3は、Ras/ERKを介して細胞増殖を制御する。

論文誌情報 Nat Cell Biol 10, 971-978 (2008)
著者 Hisashi Nojima, Makoto Adachi, Takeshi Matsui, Katsuya Okawa, Shoichiro Tsukita and Sachiko Tsukita
論文タイトル IQGAP3 regulates cell proliferation through the Ras/ERK signalling cascade
PubMed 18604197
研究室HP 分子生体情報学研究室〈月田教授〉

Figure 1 細胞密度変化によるIQGAP3の発現変化。 この免疫蛍光染色に...

要旨

生体において、細胞増殖がいかに時空間的に制御されるかは、生体の機能のみならず、発生、分化の上でも重要であり、細胞接着と関わる問題であると思われる。本研究では、細胞接着部位に局在するIQGAP3が細胞増殖が行われている細胞のみに発現し、活性化型Rasと強く結合することが示された。これによりIQGAP3がRasの活性化型に影響を及ぼすことが考えられ、IQGAP3の発現をおさえたノックダウン細胞においてRasの活性化状況を調べると、 Rasの活性は低い状態にあることが分かった。またIQGAP3ノックダウン細胞に、活性化型Rasを発現させると細胞増殖が盛んになった。以上のことからIQGAP3はRas/ERKのシグナル伝達経路を活性化することで細胞の増殖を維持しており、その局在から増殖の接触阻害に関与することが示唆された。 マウス個体レベルの小腸においては、幹細胞に由来する増殖の活発な細胞でIQGAP3が働くことも確認できた。 このように、IQGAP3は分裂する細胞すべてで働いていると考えられ、 特にがん遺伝子Rasの制御に関係していることから、IQGAP3をうまく制御できれば癌の治療にもつながると期待できる。再生医療に応用すれば、移植に必要な細胞を素早く増やせる可能性もあり、今後の進展が期待される。

Figure 1 細胞密度変化によるIQGAP3の発現変化。

tsukita_figure1_700.gif この免疫蛍光染色により、IQGAP3は細胞周期が回っている細胞のみ、その細胞間が染色されることが明らかとなった。Ki-67は細胞増殖マーカー、afadinは細胞の境界線を示す。

Figure 2 小腸におけるIQGAP3の発現パターン。

tsukita_figure2_700.gif 小腸では、クリプトにある幹細胞から派生した増殖帯の細胞(TA cells)がどんどん分裂して、図の上の方に向かって分化・移動をしている。IQGAP3はクリプトのTA cellsに大量に発現していた。Ki-67は細胞増殖マーカー、Musashiは幹細胞のマーカー、DAPIは細胞の核を示す。P:Paneth's cell

Figure 3 IQGAP3による細胞増殖シグナル伝達経路(模式図)

tsukita_figure3_700.gif IQGAP3が発現している細胞(右側)では、IQGAP3が活性型Rasと結合し、その活性化状態を維持し、Ras-Raf-MEK-ERKという古典的MAPKを介して細胞増殖を促している。一方、IQGAP3が発現していない細胞(左側)では、Rasが不活性型になり易く、増殖シグナルが無くなるため増殖が抑えられることが今回の研究で示唆された。