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感染で発現する肝臓由来のIL-7はT細胞の反応性を制御している

論文誌情報 Immunity 30, 447-457 (2009)
著者 Yukihisa Sawa, Yasunobu Arima, Hideki Ogura, Chika Kitabayashi, Jing-Jing Jiang, Toru Fukushima, Daisuke Kamimura, Toshio Hirano, and Masaaki Murakami
論文タイトル Hepatic Interleukin-7 Expression Regulates T Cell Responses.
PubMed 19285437

図1:細菌、ウイルスの感染局所ではTLR刺激にて様々なサイトカインが産生される...

要旨

<研究の背景と経緯>
IL-7はT細胞の反応性を規定するサイトカインとして古くから知られてきた。これまでの研究から、(i)IL-7のノックアウトマウスではT細胞がほとんど存在しないこと、(ii)活性化T細胞ではIL-7受容体の発現が非常に低下するが、メモリーT細胞では逆に上昇していること等の実験事実から、“生体内では、IL-7は外来刺激によって誘導される事は無く、T細胞へのIL-7の刺激はIL-7受容体の発現強度によって制御されている”と信じられてきた。一方、肝臓は炎症のセンサーとして知られてきた。実際に感染等による炎症後に産生されるIL-6は肝臓に作用してCRP等の急性期タンパクを血中に発現する。CRPを含む急性期タンパクは、一般的な血液検査にも用いられ て生体内の炎症のマーカーとして知られている。しかし、これまでに急性期タンパクでT細胞に直接作用するものは知られていなかった。

<本研究の内容>
今回、我々は、感染後のTLR信号にて誘導される1型インターフェロンが肝細胞に直接作用して肝臓から血中に多くのIL-7が循環すること、さらに、その IL-7がCD4+T細胞およびCD8+T細胞の生存を誘導してCD4+T細胞およびCD8+T細胞の反応性を増強することを示した。つまり、IL-7は肝臓から感染等によって引き起こされた炎症時に誘導される急性期タンパクでT細胞に直接作用してその機能を増強して感染等を制御するサイトカインである事が判明した。

<今後の展開>
肝臓でのIL-7の発現を人為的に制御する事で自己免疫疾患を抑制したり、より効率的なワクチンの開発につながる可能性がある。今回肝臓からの新しい急性期タンパクとしてIL-7が同定された事から、更なるT細胞の制御をつかさどる急性期タンパクの存在が示唆される。

図1:細菌、ウイルスの感染局所ではTLR刺激にて様々なサイトカインが産生される。それらのサイトカインは血中にのって肝細胞に作 用して多くの急性期タンパク質を発現する。今回、TLR刺激によって産生される1型インターフェロンが肝細胞に働きIL-7 が血中に増加してT細胞の反応性を亢進することが証明された。