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ヘテロクロマチンはセントロメア欠損に応じた染色体の再編成に影響を及ぼす

論文誌情報 Science 321, 1088-1091 (2008)
著者 Ishii, K.*, Ogiyama, Y.*, Chikashige, Y., Soejima, S., Masuda, F., Kakuma, T., Hiraoka, Y. and Takahashi, K. (*; equal contribution)
論文タイトル Heterochromatin Integrity Affects Chromosome Reorganization After Centromere Dysfunction
PubMed 18719285
研究室HP 細胞核ダイナミクス研究室〈平岡教授〉

図1.セントロメア破壊の誘導によって染色体分配異常を呈した分裂酵母。 DAPI染...

要旨

染色体分配に必須なシスドメインであるセントロメアを生細胞で破壊する技術を分裂酵母で確立し、その後の生物応答について解析した。その結果、大半の細胞は染色体分配に欠損を示して致死に至るが、ネオセントロメア形成もしくはテロメア融合という染色体再編成によって致死を免れる細胞が数千分の一の頻度で出現することを発見した。さらに、ネオセントロメア形成とテロメア融合の出現頻度はヘテロクロマチンの形成不全によって大きく変化することを見出し、染色体再編成におけるヘテロクロマチンの重要性が明らかになった。

解説

本研究で見出されたような染色体の大規模な再編成は、生物の進化の過程で頻繁に起きてきたことであり、その種分化との密接な関連も系統分類学から指摘されている。分子遺伝学研究に最良な分裂酵母をモデル生物とする今回の我々のシステムは、そのような染色体に刻まれた進化の歴史に対する実験的介入の可能性を新たに呈示するものである。今回の研究成果は、ヘテロクロマチンというエピジェネティックな構造が染色体進化の重要な決定因子であったことを強く示唆する。

図1.セントロメア破壊の誘導によって染色体分配異常を呈した分裂酵母。

0808image1_800.jpg DAPI染色によって染色体が可視化されている。セントロメア破壊誘導前(左)には染色体は均等に分配されているが、セントロメア破壊の誘導(右)によって分裂時に中央に取り残される染色体や不均等分配による核の大小を示す細胞像が高頻度で観察される。

図2.

0808image2_800l.jpgセントロメア破壊に対する分裂酵母の染色体再編成応答は、ネオセントロメア形成とテロメア融合の2種類に分類されるが、その選択はヘテロクロマチンの状態によって規定されている。