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Distinct roles of the Flil ATPase and proton motive force in bacterial flagellar rotein exprt

論文誌情報 Nature 451, 485-488 (2008)
著者 Tohru Minamino and Keiichi Namba
論文タイトル Distinct roles of the Flil ATPase and proton motive force in bacterial flagellar rotein exprt
PubMed 18216858
研究室HP 日本電子YOKOGUSHI恊働研究所〈難波特任教授〉

図1.べん毛で泳ぐ細菌の模式図と細菌べん毛の模式図サルモネラ菌や大腸菌は数本のべ...

要旨

 細菌の運動器官であるべん毛の構成蛋白質は、独自の輸送装置によりべん毛中 心軸に沿った細いチャネルを通して先端へ運ばれ、べん毛を構築する。
FliIはべん毛特異的ATPaseで、その変異株はべん毛を形成しないことから、FliIが輸送を駆動すると考えられてきた。本研究では、低頻度ながらfliH-fliI欠損株がべん毛を形成し、輸送ゲート蛋白質FlhAやFlhBの変異で形成 頻度が高くなり、プロトン駆動力が必須であることを見いだした。以上の結果から、FliHとFliIは輸送されるタンパク質のN末端を輸送ゲートへ挿入する過程だけを助けており、その後の、輸送されるタンパク質をほぐしながらチャネル内に送り込む過程は、輸送ゲート自体がプロトン駆動力のエネルギーを使って推進していること、FliIによるATP加水分解反応は、この輸送ゲートによる継続的プロセスを邪魔しないよう、FliHとFliIを輸送ゲートから解離させるために使われていることが示唆された。

図1.べん毛で泳ぐ細菌の模式図と細菌べん毛の模式図

figure1_2008_800.jpgサルモネラ菌や大腸菌は数本のべん毛を細胞周辺から延ばし、束にして回転させて泳ぎます。べん毛はらせん型のスクリュープロペラで、らせんのピッチは2.5μm、直径は0.5μm。それぞれの根元に回転モーターを持っています。べん毛は大まかに回転モーターである基部体、ユニバーサルジョイントであるフック、プロペラのように動くべん毛繊維――の、3つの部分構造で構成されています。(CM;細胞膜/PG;ペプチドグリカン層/OM;外膜)

図2.べん毛たんぱく質輸送装置の模式図


0801figure2_2008_800.jpgべん毛たんぱく質輸送装置は、6種類の膜貫通型たんぱく質(FlhA、 FlhB、 FliO、 FliP、 FliQ、 FliR)と3種類の細胞質性たんぱく質(FliH、FliI、 FliJ)から成り、べん毛基部体の細胞内に面した部分の中心に存在すると考えられています。膜貫通型のたんぱく質は複合体を形成し、輸送ゲートとして機能します。 FliIはATPaseとして働き、FliHはFliIのATPase活性を制御するとともにFliIと輸送ゲートの結合を助け、FliJは輸送基質であるべん毛たんぱく質の細胞内での凝集を防いで輸送を促進します。(CM; 細胞膜/PG;ペプチドグリカン層/OM;外膜/PMF;プロトン駆動力/ H+;プロトン/ N;N末端/C;C末端)

図3.ATPaseとプロトン駆動力の役割

0801figure3_2008_300.jpg(A)FliHとFliIの複合体はFliJと輸送されるべん毛たんぱく質を結合し、FliH/FliI/FliJ/輸送基質複合体を形成します。(B)この複合体が輸送ゲートに結合する際に、FliIは6分子でリング構造を形成し、その真ん中に結合したべん毛たんぱく質のN末端を輸送ゲート内へ挿入します。(C)その後、FliIのATP加水分解反応によってFliH、FliIおよびFliJは輸送ゲートから解離し、輸送ゲートはプロトン駆動力をエネルギー源として残りの長いポリペプチド鎖を解きほぐしつつ、べん毛中心軸に沿ってべん毛先端まで貫通するチャネル内へ送り込む継続的なプロセスを駆動します。

図4.べん毛たんぱく質輸送装置と病原性因子分泌装置の構造比較

figure4_2008_600.jpg両者はタイプ3たんぱく質輸送装置に分類され、構成するたんぱく質のアミノ酸配列も似ており、全体の立体構造もよく似ています。