GCOE外国人研究者等セミナー

金田浩平 ・ 蘇 経貿(個体機能学講座 発生遺伝学研究室(濱田研))

演題 A gene network regulating temporal changes in neural stem cell function: role of micro RNA let-7b
演者 Dr. Jinsuke Nishino
(Assistant Professor, University of Texas Southwestern Medical Institute)
日時

2012年 2月7日 午後3時~4時

場所 吹田キャンパス ナノ棟3階セミナー室






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報告

2/7 西野 仁輔先生セミナー報告  濱田研究室  金田 浩平

 

今回の生命機能研究科GCOE外国人研究者招聘セミナーでは、テキサス大学准教授の西野仁輔先生をお招きし、"A gene network regulating temporal changes in neural stem cell function: role of micro RNA let-7b"と題してご講演いただいた。先生は博士課程からphDの期間、濱田研究室に所属され、当時から神経発生に関する研究に従事されていました。今回は神経幹細胞の経時的な性質変化について、大変興味深い研究を紹介していただきました。

 

神経幹細胞(neural stem cell (NSCs))は側脳室の脳室帯と脳室下帯に存在し、自己複製能と多分化能を持ち、その性質が成長/老化につれて刻々と変化していく。胎児期には高い複製能力をもつが、加齢で段々と衰えていく。幼児期の成長のためと、老齢期の腫瘍形成リスク回避のための機構であると考えられるが、その制御機構はわかっていない。今回の講演では腫瘍形成に関係の深いImp1,let7b, Hmga2, p16Ink4a/p19Arfシグナルに着目した、NSCsの性質変化メカニズムの研究を紹介された。

 

マウスにおいて、p16Ink4a/p19ArfHmga2発現が相補的に制御され、胎児期の高いHmga2発現がNSCsの高い自己複製能を形成している。Hmga2K.Oマウスでは体の矮小化が起こり、成長にHmga2の高い発現が必要であることが示唆された。NSCsの老化に伴い、miRNAであるlet-7b発現量が増加し、Hmga2発現の抑制とp16Ink4a/p19Arf発現の促進が起こり、結果NSCsの自己複製能が低下する。Hmga2K.OマウスのNSCsは増殖能が低下するが、p16Ink4a/p19ArfK.Oによって有意にレスキューされること、Hmga2遺伝子の3'UTRlet-7認識配列が多数存在し、let-7b発現量の高い老齢マウス由来のNSCsHmga2の発現を上昇させるにはlet-7不応型の変異Hmga2の導入が必要であることを実験より確認し、上記の結論を導いた。

 

let-7bが制御するNSCsの自己複製能制御のシグナル経路に注目し、Hmga2と同じくlet-7認識配列を持つImp1に注目した。Imp1Cyclin Dを発現誘導し、NSCsの未分化状態を保った自己複製能を制御する。Imp1も胎児期に発現が高く、let-7bによって老化に伴い発現が抑制される。Imp1の発現低下に伴いNSCsの自己複製能の低下と細胞分化の促進が起こる。Imp1K.Oマウスで体の矮小化と、大脳皮質で未熟なNSCs分化が引き起こされ、これがCyclin Dファミリーの発現低下による細胞周期(G1)が大きく伸びることに起因することを実験より確認し、上記の結論を導いた。

 

これらの結果、NSCsの性質の経時変化にはlet-7bに制御されるHmga2Imp1によるシグナル経路が大きく関わると結論した。講演後の質疑応答では神経系の分化機構、幹細胞としてのNSCsの性質、遺伝子発現変化で引き起こされる形態異常等、幅広い分野、視点から活発な研究討論が行われ、参加者の興味の高さがうかがわれた。


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