GCOE外国人研究者等セミナー

福谷祐真(脳神経生物学講座 細胞分子神経生物学研究室(山本研究室))

演題 Patterning the Cerebral Cortex: Genetics of Progenitor and Neuron Fate
演者 Prof. Dennis D.M. O'Leary
(Molecular Neurobiology Laboratory, The Salk Institute)
日時

2010年 1月28日(木) 16:00-17:30

場所 吹田キャンパス アネックス棟 3Fセミナー室






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報告

大脳皮質は哺乳類の脳の中で最も複雑な部位であり、適切な発生を遂げることによって様々な機能を獲得する。そうでなければ、精神遅滞や学習異常といった機能的欠落が起こってしまう。また、大脳皮質は領野という特徴的な機能を持つ部位を形成する。領野の形成は大脳皮質の発生段階において非常に重要な過程である。演者らは神経前駆細胞に発現する様々な転写調節因子群が領野の形成にどのように関わっているということを明らかにした。今回のセミナーでは転写調節因子群の中でもEmx2、Coup-TF1のin vivoにおける機能解析の結果について紹介された。
Emx2は大脳前部では発現が弱いが、後部では強いことがわかっている。そこでEmx2の発現量や発現の有無によって領野の形成がどのように変化するかを調べた。Emx2の機能獲得実験を行うためにnestin-Emx2マウスを作成、機能欠損実験にはEmx2遺伝子欠損マウスを用いた。セロトニン抗体染色を行って領野の面積の観察を行ったところEmx2欠損マウスではV1の面積が野生型に比べ減少し、M1、S1、A1は後部にシフトすることが観察された。nestin-Emx2マウスでは野生型に比べ、V1の面積の増加し、M1、S1、A1は前部にシフトすることがわかった。このことから、Emx2は発現量によって視覚野の適切な大きさと、領野の適切な位置を制御していることがわかった。
Coup-Tf1もEmx2と同じく大脳前部では発現が弱いが、後部では強いことが知られている。領野形成を調べるために、Emx1‐CreマウスとかけあわせることでCoup-TF1のコンディショナルノックアウトマウスを作成した。Coup-Tf1を欠損させることで、前側の領野が拡大し、V1、M1、A1が後部に劇的にシフトしていることが観察された。このことからCoup-TF1は領野後部の形成のバランスをとるために必要であることがわかった。
Emx2もCoupTf1も発現の勾配は似ているが、領野の制御の仕方は異なっている。結果からEmx2の発現量により領野後部の大きさが変化することが明らかとなった。CoupTf1は領野後部の形成に関わる遺伝子、つまりEmx2、Pax6の発現量を制御しているのではないかと結論づけている。
このように細胞自発的に発現する転写調節因子群が互いに制御しあうことで適切な領野形成を引き起こしているのではないかと演者は述べている。また、演者たちは視床軸索による領野の形成の可能性も示唆しているが、まだ現象論的部分が多く、詳しい分子メカニズムの解明には至っていないとしている。
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