GCOE外国人研究者等セミナー

浅野省吾(個体機能学講座 免疫発生学研究室(平野研究室))

演題 Vaccines
演者 Dr. Philippa Marrack
(Howard Hughes Medecal Institute, Department of Medicine, National Jewish Hospital and Research Center, Department of Microbiology and Immunology, University of Colorado Health Sciences Center)
日時

2009年 12月7日(月) 午後4時~5時30分

場所 医学部講義棟B講堂






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報告

フィリッパ・マラック博士は、1970年イギリスのケンブリッジ大学で博士号を取得後、MRC分子生物学研究所でT細胞の研究を始め、TCRやT細胞クローン除去など重要な発見を多数なされた免疫学の世界的権威である。現在はコロラド大学の教授他、いくつかのポストに在籍し、T細胞だけでなくB細胞やアジュバントの研究にも従事されている。また、1994年にはノーベル賞の有力な先行指標として有名なルイザ・グロス・ホロウィッツ賞も受賞され、ノーベル賞の候補としてもその名が挙がっている。今回のセミナーでは、"ワクチン"をテーマに挙げ、その中でも抗原に対する免疫応答を強めるためにワクチンと同時に投与される「アジュバント」研究について自身の研究を元に話された。
アジュバントを用いたワクチンでは、抗原だけを免疫した時と比べより多くのメモリーT細胞(抗原特異的なメモリーCD4+,CD8+T細胞)及びB細胞が体の中で作られる。よって、アジュバントを打つことによってワクチンの効果は高まることとなる。現在、臨床の現場で用いられているアジュバントは、1926年に発明されたALUM(アルミニウム塩)が主であり、動物実験で用いられるようなIFAやCFA(不完全・完全フロイントアジュバント;パラフィン、結核死菌)は用いられない。アジュバントの種類は色々あるが、ほぼALUMしか使われていないというのは意外であった。ヒトに用いられるこのALUMは、抗原とよく吸着し、体内のフィブリノーゲンを用いてタンパク質(抗原、ヒストン)と凝縮し体内に長時間留まり、持続的な抗原刺激を与えることができる。また免疫活性メカニズムとして、ALUMは通常のアジュバントとは違い、NLRP3、ASC、pro-caspase-1などで形成されるinflammasomeがIL-1βのような炎症性サイトカインの産生を誘導し、TLRの下流MyD88やTRIF非依存に炎症反応を起こす。しかしながら、抗体反応やCD4+、CD8+T細胞の反応に関してはこれらNLRP3 inflammasome complexには依存しておらずまた別のメカニズムがあるらしい。
ALUMはジフテリア、破傷風、百日咳などのワクチンには用いられているが、流行のインフルエンザのアジュバントとしては適さない。マラック博士は自身のデータを元にその理由として、ALUMが核内抗原に対してはCD8+T細胞のキラー活性は示すが、表面抗原に対してはキラー活性を示さないからであると述べていた。現在世界で猛威を振るっているインフルエンザ、そのワクチンと共に使われる新たなアジュバントの開発が望まれる。



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