GCOE外国人研究者等セミナー

鶴岡峰子(個体機能学講座 免疫発生学研究室(平野研究室))

演題 Ubiquitin-mediated pathways that regulate T cell tolerance and effector function
演者 Dr. Paula M. Oliver
(Department of Pathology,and Laboratoru Mecidine University of Pennsylvania)
日時

2009年 12月5日(土) 午後2時30分~3時30分

場所 医学部共同研究棟7階セミナー室






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報告

本セミナーでは、E3 ubiquitin ligaseへの結合能が報告されている、Ndfip1(Nedd4 family interacting protein 1)という分子のノックアウトマウスの解析により得られた知見について紹介された。

 ユビキチンは、リンパ球の分化促進因子として約30年前に発見されて以来、多くの研究がなされてきた。なかでも、ユビキチン化は自然免疫と獲得免疫の双方の制御に関与している可能性が、数々の実験的証拠より示唆されている。これまでにユビキチン化に関与する何百もの酵素が同定されているが、その詳細な制御様式については未だ不明な点が多い。

 演者らは、Ndfip1とE3 ubiquitin ligaseとの関係をより詳細に理解するため、Ndfip1ノックアウトマウスを作成し解析を行った。Ndfip1ノックアウトマウスは、出生時は正常であるが、生後6週齢より耳殻に炎症を生じ始め、8週齢になるとほぼ全てのノックアウトマウスで皮膚炎症状を呈した。このように、Ndfip1ノックアウトマウスは、外来抗原への暴露により、皮膚、肺においてTh2型のアトピー性炎症疾患を発症する。またNdfip1ノックアウトマウスでは、腸管において上皮の肥厚や好酸球、リンパ球の浸潤等、炎症状態を示し、体重減少や早死が認められる。しかし、Ndfip1-/-RAG1-/- マウスでは腸管における炎症は見られず正常であり、さらに、RAG1-/-マウスにNdfip1-/- naïve CD4 T cellを移入し、5-6週間後に解析したところ、血清中IL-5濃度の上昇、IL-5産生性のCD4 T cellの増加が確認された。これらの結果より、Ndfip1ノックアウトマウスが示す炎症症状は、T cellにおいてNdfip1が欠損していることが原因であることが明らかとなった。

 一方で、Ndfip1欠損マウスは腸管におけるTregの割合が減少しており、iTregの分化が障害されていることが示唆された。in vitroにおいてもNdfip1欠損 T細胞はiTregへの分化能が低下していた。そこで、OVAを特異的に認識するT細胞を用い、in vivoにおけるiTregの分化を検討した。WTのT細胞は、OVAの投与によりiTregへと分化したが、Ndfip1欠損 T細胞ではiTregへの分化は見られなかった。よって、Ndfip1は腸管におけるiTreg分化を制御していることが明らかとなった。これらの結果より、Ndfip1は外来抗に対するT細胞のトレランスを促進させ、Th2への偏向を妨げることで、食物アレルギーや喘息、アトピー性皮膚炎等の疾患感受性を抑制していることが示唆された。

 続いてin vitro 、in vivoにおける解析より、Ndfip1欠損T細胞は、活性化に伴いTh2への偏向がみられ、好酸球をリクルートするIL-5の産生を介して腸管炎症を誘発することが示された。これらの傾向は、Itch欠損マウスの表現形と酷似し、さらにNdfip1は、ItchのJun B ( Th2サイトカインであるIL-4やIL-5の産生を増加させる) ユビキチン化を促進することから、Ndfip1はItchの機能に影響を与えていることが示唆された。そこで、Ndfip1の発現とNdfip1-Itchの相互作用を促進させるT細胞の活性化について検討を行った。Ndfip1、JunBを欠損すると、活性化後のT細胞の半減期が延び、Ndfip1は不活性化状態となりJunBが蓄積した。その結果、Th2サイトカイン産生の促進と、Th2型の炎症性疾患の発症を認めた。

 以上の結果に基づき、演者らは、T 細胞の活性化によりNdfip1の発現が増強され、Ndfip1のItchへの結合が誘導される結果、Itchの機能が促進するという、Itch活性化の新規制御機構を提唱した。

 どのようにしてE3 ubiquitin ligaseが機能するのか、その詳細な機構が解明されれば、自己免疫疾患やアトピー性疾患の治療に向けた新たなアプローチが可能となる。そういった意味でも今回の研究成果は重要であり、さらなる報告が期待される。




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