GCOE外国人研究者等セミナー

諸井亜理紗(個体機能学講座 免疫発生学研究室(平野研究室))

演題 The selective pressures on becoming a T cell
演者 Dr. Eric S. Huseby
(Department of Pathology,University of Massachusetts Medical School)
日時

2009年 12月5日(土) 午後1時30分~2時30分

場所 医学部共同研究棟7階セミナー室






※クリックで写真拡大

報告

生体内においてT細胞はT細胞上にあるTCRと抗原提示細胞上にあるMHCと外来抗原ペプチドの複合体を認識することによって活性化している。このTCRは一体どのようにして数多くあるペプチド-MHC複合体を認識しているのかを調べるため演者らは検討を行うこととした。
演者らは3Kペプチドに反応するTCRをもつB3K506およびB3K508というトランスジェニックマウスを2種類作成し、このマウスを解析したところB3K506,508マウス由来のT細胞はいずれもTCRを介して3Kペプチド-MHC複合体と反応することが分かったが、通常の3Kペプチド反応性T細胞が反応しないはずの配列に変異をいれたペプチドにもB3K506,508マウス由来のT細胞は反応してしまうことが分かった。なぜこのようなことが起こるのかを調べるため、TCRとMHC-ペプチド複合体の反応のキネティクスをみた。この結果他のトランスジェニックマウス(OT-1など)由来のT細胞のTCRはゆっくりとMHC-ペプチド複合体と会合してゆっくりと解離していくのに対し、506,508マウスではいずれもすぐに会合し、すぐに解離していってしまうということが分かった。
さらに、これまでこのような変異の入ったペプチドがTCRを刺激することは報告されていなかったため、TCR下流のシグナルもこれらのペプチドで活性化されるのかを検討した。この結果これら変異の入ったペプチド-MHC複合体で刺激したときにもT細胞と抗原提示細胞とのあいだに形成されるシグナル伝達のプラットフォームである免疫シナプス構造は正常に形成されており、さらにTCR下流のシグナル分子のリン酸化に代表されるT細胞の活性化も起こっているということが分かった。
ではこのB3K506,508マウスにおいて本来刺激が入るはずのないペプチドで刺激が入るのはなぜなのか??
演者らは同じTCRとMHC複合体が1回しか結合しないのではなく同じTCRとMHC複合体が複数回会合すると仮説をたて、今回見つかったB3K506,508マウス由来のTCRとMHC複合体においては早い会合と解離を繰り返すことによって一回解離したTCRとMHC複合体が動いて位置から離れてしまう前に再度会合できるのではないかと考えた。
最後にまとめとして演者たちはTCRとMHC-ペプチド複合体の反応に3種類あるとした。1つめはこれまで考えられていた高いアフィニティーをもつペプチドでTCRを刺激したときに見られるゆっくりと会合しゆっくりと解離することによってT細胞を活性化するもので同じTCRとMHC複合体とは1回程度しか反応しないと考えられる。2つめは低いアフィニティーしかもたないペプチドで反応させたときのゆっくりと会合するがすぐに解離してしまうためT細胞を活性化できないもの。そして3つめは今回演者たちが明らかにした低いアフィニティーしかもたないペプチドであってもTCRとMHC複合体がすぐに会合しすぐに解離することによって何度かTCRと会合することによってT細胞を活性化するものである。




一覧へ戻る