GCOE外国人研究者等セミナー

篠原正樹(脳神経工学講座 脳システム構築学研究室(村上研究室))

演題 Controls of the frontal cortical size and the neuronal number during development
演者 Dr. Setsuko Sahara
(The Salk Institute for Biological Studies)
日時

2009年 11月30日(月) 13:30-15:30

場所 吹田キャンパス ナノバイオロジー棟 3Fセミナー室






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報告

 進化における動物の認知機能の高度化には脳の容量増加と密接な関係があると考えられている。特に、大脳はその大きさとは比べ物にならないほどの広大な表面積を有し、この表面積の増大が類人猿にみられる高度な精神活動や認知能力の獲得に寄与したと信じられている。しかし、どのようにして発生中に前脳皮質領域の大きさが調節されるのか、そのメカニズムはほとんど分かっていない。
 今回の演者である佐原博士は、前脳を構成する神経細胞に着目し、2つの視点からこの問題に迫られている。1つ目は前脳の主要な興奮性神経細胞である錐体細胞であり、2つ目は主要な抑制性神経細胞であるGABA作動性介在細胞である。今回、前者についてはその増殖に関するメカニズムを、後者についてはその分布に関するメカニズムをお話して下さった。
 まず佐原博士は、繊維芽細胞成長因子ファミリーの一つであるFgf10が神経上皮細胞(NE細胞)から放射状グリア細胞(RG細胞)への皮質幹細胞分化に関与し、脳皮質領域の大きさを制御している事を報告された。Fgf10を欠失させたマウスでは、皮質幹細胞分化が遅延され、NE細胞が『対称分裂』と呼ばれる自身の増殖を続けてしまい、前脳が特異的に肥大化する事を示された。この発見は、自閉症患者に特徴的な一時的な脳の成長の増進を説明しうるメカニズムを示唆していると同時に、進化の過程でどのように特定の脳領域が拡大したのかを解明する手がかりを与える非常に興味深い研究結果である。
 また、後半については未発表データを交え、GABA作動性介在細胞がどのように前脳領域へ分布し、前脳皮質を構成する全細胞の約20%という割合を確立するのかについてお話をして下さった。
 我々の研究室と佐原博士が研究対象としている細胞種が共通していることもあり非常に興味深くお話を聞かせて頂いた。また、佐原博士は非常に気さくにお話をなさっていたが、その優しそうな雰囲気とは裏腹に研究に対する情熱や真剣さはどの研究者にも負けない強い思いが感じられた。神経科学に対する知識だけではなく、その姿勢についても学ぶ事の多い有意義なセミナーであった。



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