GCOE外国人研究者等セミナー

伊吹達也(ナノ生体科学講座 プロトニックナノマシン研究室(難波研究室))

演題 Subunit feedback control in flagellar systems
演者 Dr. Phillip David Aldridge
(Institute for Cell and Molecular Biosciences, University of Newcastle)
日時

2009年 10月22日(木) 16:00-17:00

場所 吹田キャンパス ナノバイオロジー棟 3Fセミナー室






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報告

細菌べん毛は約30種類のタンパク質からなる超分子複合体であり、そのべん毛の形成には60種以上もの遺伝子産物の秩序だった機能が必要である。べん毛の構造は基部体、フック、フィラメントの大きく3つに分けられ、これらはClass I, Class II, Class IIIと呼ばれる遺伝子群が発現制御を受けて、順次翻訳されることによって効率よく構築される。まず、Class IではFlhDC(σ70)タンパク質複合体が転写活性化因子として働き、Class IIの発現に移行する。Class IIでは基部体からフックまでが構築され、このとき同様に、FliA(σ28)というタンパク質が転写活性因子として働き、Class IIIの発現に移行する。Class IIIではフラジェリン(FliC)が大量発現され,べん毛繊維が構築される。また、Class I遺伝子が機能しないと、Class II, Class IIIの遺伝子が発現しないため、Class Iはマスターオペロンとも呼ばれている。
 細菌べん毛には、細菌の種によって様々な構造や機能を有するべん毛が存在するが、その構成部品としてのタンパク質は強く保存されている。しかし、その一方で、べん毛遺伝子発現の制御システムは多様性に富んでいる。では、なぜ異なる制御システムで同じべん毛ができるのであろうか?今回のセミナーでは、べん毛遺伝子発現の制御システムについての研究を先進的に行っているニューキャッスル大学のPhillip Aldridge博士に講義していただいた。
 本講義では、Aldridge博士が主に研究対象として取り扱っているサルモネラ菌とコーロバクターの細菌べん毛の遺伝子発現制御を中心に話をしていただいた。サルモネラ菌のべん毛遺伝子制御に大きく関わっているFliTというタンパク質がある。FliTはべん毛フィラメントのキャップタンパク質のシャペロンとして機能すると同時に、class IIの転写活性化因子FlhD₄C₂と結合し、FlhD₄C₂とDNAの結合を阻害することでclass IIの発現を制御するregulatorとして働くことが知られている。Aldridge博士らのグループは、FliTとFlhD₄C₂の相互作用を表面プラズモン共鳴法により調べた。その結果、FliTはFlhD₄C₂と結合するが、DNAと結合しているFlhD₄C₂とは結合しないことが分かった。さらに、通常べん毛の本数は5〜6本で制御されているのに対し、FliTを欠損させた変異体株はべん毛の本数に大きくばらつきがでた。つまり、FliTが欠損することによりFlhD₄C₂へのフィードバック機構が崩れたと考えられる。さらに、サルモネラとは異なるべん毛遺伝子制御システムを持つコーロバクターではFlbTというタンパク質がFliTと同様のregulatorとして働いており、FljJタンパク質がanti-regulatorとして機能しているといういうモデルが示された。
 今後、複雑なべん毛遺伝子制御システムが詳細に解明されることが期待される有意義なセミナーであった。



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