GCOE外国人研究者等セミナー

鳥越万紀夫(脳神経工学講座 脳システム構築学研究室(村上研究室))

演題 Molecular mechanisms underlying a switch in axonal sensitivity to guidance cues during midline crossing
演者 Dr. Junichi Kawada
(Northwestern University Feinberg School of Medicine, USA)
日時

2009年 9月24日(木) 13:30-15:30

場所 吹田キャンパス ナノバイオロジー棟 3Fセミナー室






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報告

神経発生期において軸索先端の成長円錐は周囲に存在する軸索ガイダンス因子を感知しつつ、軸索を最終標的に到達させる。面白いことに、この軸索投射の過程において成長円錐は中間標的由来の軸索ガイダンス因子に対する反応性を調節しつつ、最終標的に軸索を到達させることが示唆されている。しかしながら、その反応性変化がどのような分子メカニズムによって制御されているかに関しては依然不明である。
河田博士らはこの伸長中の軸索における反応性変化の分子メカニズムを明らかにするためのモデル系として、脊髄の交連性軸索に着目した。脊髄の背側に存在する細胞体から伸長する交連性軸索は、はじめ腹側正中付近からの誘引因子により腹側正中線方向に伸長する。そして正中線に到達した後は、誘引因子へ反応性が減弱する一方で正中線付近に存在する反発因子への反応性を増加させる。この反応性変化により正中線から脱し、次の標的へ伸長していくことが可能となる。河田博士らはこの交連性軸索の反応性変化過程の中でも反発因子への反応性獲得の局面に着目し研究を行った。
交連性軸索が正中線に到達した後の反発作用を引き起こす分子機構としてslit/roboシグナリングの寄与が示唆されている。slitは腹側正中付近から分泌される軸索ガイダンス因子であり、その受容体であるroboとの相互作用により反発作用を示すことが示唆されている。正中線に到達した交連性軸索はrobo1の発現を増加し、腹側正中付近のslitによる反発作用で正中線から背側への伸長を促すことが示唆されている。しかしながら、どのような分子機構によって反発因子への反応性獲得の局面であるrobo1の発現増加などが制御されているかに関しては全く分かっていない。
 河田博士らはrobo1の発現変化に寄与する分子を同定するため、Two-hybrid 法、共免疫沈降法を用い、Ubiquitin-Specific Protease 33(USP33)がrobo1と相互作用することを示した。そしてslitに対する反応におけるUSP33の役割を明らかにするため、交連性軸索の培養系においてsiRNAを用いたUSP33の機能消失実験を行った。この結果、USP33はslitとの相互作用時におけるrobo1の軸索先端への配置と膜表面への移行、 robo1の発現安定性に必要であることが示唆された。さらに河田博士らはin vivoにおけるUSP33の役割を明らかにするため、脊髄においてもsiRNAを用いたUSP33の機能消失実験を行い、robo1ノックアウトマウス、slitノックアウトマウスの表現系同様、USP33欠損の表現系も正中線付近での軸索伸長の停滞であることを示した。以上の結果はUSP33が正中線からの伸長に寄与するslitへの反応性獲得に必要であることを示唆するものである。講演後、盛んな議論が行われ非常に有意義なセミナーとなった。




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