GCOE外国人研究者等セミナー

大町優史(ナノ生体科学講座 ソフトバイオシステム研究室(柳田研究室))

演題 Navigation by Molecular Motors in Vitro
演者 Prof. Yale E. Goldman
(Department of Physiology, University of Pennsylvania)
日時

2009年 9月7日(月) 13:30-14:30

場所 吹田キャンパス ナノバイオロジー棟 1階セミナー室






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報告

小胞の細胞内輸送はニューロン、免疫細胞、心臓血管系を含む多くの細胞の標準的な機能に不可欠である。
ミオシンはアクチン繊維に沿って、キネシン・ダイニンは微小管に沿って荷物を輸送するモーター蛋白質である。細胞骨格繊維(アクチン、微小管)は細胞内のさまざまな場所で交差しており、交差点での分子モーターの振る舞いは長距離輸送の効率と正確さに関係している。複雑な細胞内での分子モーターの機能を確かめるためにさまざまな実験方法がin vitroで設計されている。
細胞骨格フィラメントの交差点はサンプルチャンバーに横方向と縦方向の2方向からフィラメントを流すことで作製される。この実験系を用いて有機色素でラベルしたミオシン、キネシン、ダイニン、また複数の分子モーターが結合した蛍光ビーズがフィラメントの交差点に遭遇したときの動きを観察した結果、フィラメントが交差する部分では分子モーター間での綱引きにより力の強い方へと荷物が輸送されることが明らかになった。荷物輸送に関わる活性分子の数を調整することで荷物をフィラメントの交差する部分に固定することも可能となる。これは細胞内での輸送と結合機能に対応している。このように細胞内での荷物輸送の特徴を理解するためにin vitroで細胞内環境を再構成することは細胞内での異なる種類の分子モーターの相互作用を研究する上で有効である。

また、Goldman教授らはparallaxと呼ばれる1分子の3次元位置計測法を開発している。
Parallaxは位置をずらした2枚の平行なミラーでプローブからの光を2分割し、2つの像を作る。プローブがZ方向に移動して焦点から外れると2つの像の位置関係が変化することを利用してZ方向の変位を測定する。Parallaxは高い位置精度と時間分解能でプローブの3次元の動きを追跡することができる。Parallaxを用いてmyosinⅩのアクチンフィラメント上での3次元運動を観察した結果、Z方向への変位が確認されミオシンⅩはアクチンフィラメント上を回転しながら進んでいることが明らかになった。分子モーターがフィラメントのまわりをらせん状に運動することは多くの分子が存在する細胞内の複雑な環境で小胞を効率的に輸送するという点において重要な機能かもしれない。
セミナー後にはGoldman教授と活発な議論が行われ、私たちにとって有意義なセミナーであった。




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